スギアカツキ
食文化研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学・栄養学・発酵学・微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究をはじめる。現在は「食文化研究家」として、TV・ラジオ・雑誌・ウェブなどの多方面で活躍中。
春の訪れを喜ぶ食事が、もっと気軽に、ふわりと気負いなくできたら…と思うことはありませんか?例えば、春らしい代表料理に「ちらし寿司」がありますが、華やかでワクワクするものの、一から作るとなるとそれなりに準備が大変。また、お米料理なので糖質が気になる方もいらっしゃるでしょう。そして、春はまだまだ肌寒い気候ですから、冷めた一皿より温かい方がカラダを優しく癒やしてくれそうです。
今回はそんなヘルシーで温かなごちそう料理を簡単に作れてしまう、心とおなかに優しい春レシピを考えました。題して、ちらし寿司をもじって「ちらし蒸し」。糖質が気になるお米の代わりに、野菜とお魚を主役にしてボリュームも意識しながら、いつものフライパンを活用して、香りよく蒸し上げていきましょう。
この「ちらし蒸し」を作る上で、大切にしたいポイントは3つ。窮屈なことはひとつもありませんから、ご自身の好みの食材や食器を心のそばに置きながら、自分らしい一皿を仕上げてみてくださいね。
ポイント①鮮やかな野菜を意識して選ぶ
春は野菜が楽しい。鮮やかな色味を意識して。
ちらし蒸しのイメージは、お花畑。その背景を彩るために、自由な発想で野菜を組み合わせていきましょう。春に旬を迎える菜の花やキャベツ、えんどう類はリーズナブルに揃えることができますし、根菜類(ごぼう、蓮根)も比較的揃う季節。そのほか、赤、黄、オレンジなどのビビッドな緑黄色野菜(にんじん、パプリカ)や、ちょっと珍しい野菜(ビーツ、紅芯大根など)なども冒険的に選んでみると面白いでしょう。
お店に並ぶ野菜は年々バリエーションも増えていますから、野菜選びをウキウキ楽しんでみてください。整腸作用につながる食物繊維、抗酸化力を持つフィトケミカルをたっぷり摂取することができます。
ポイント②漬け魚は焼くだけではもったいない!
和定食などでおなじみの漬け魚。凝縮された旨味は野菜との相性も抜群。
日々の献立を考えるとどうしても多くなるのが、お肉。そんなマンネリな献立にヘルシーでおいしい変化球を与えるべく、「魚」をもうひとつの主役に立てましょう。魚って扱いにくい、どうやって味付けしたらいいのかわからないという心配は不要です。西京漬けや粕漬けなどの漬け魚を使うことで、難しい調味はしなくても極上の香りや旨味が広がります。漬け魚は焼くものという固定概念から解放されると、料理がもっと楽しくなります。
ポイント③お気に入りの器に盛り付けて気分を高める
私が長年大切に使っている器達。汁物にはリム付きのスープ皿が便利。
食事の満足度を高めるためには、器選びも重要です。普段使わない花柄は季節の演出に最適ですし、明るいカラーの器は食卓を元気な印象に仕立ててくれます。お気に入りの器を選んで大切に使い続ける習慣は、毎日の食生活を心豊かなものにしてくれるはずです。
さあ、それでは3つのポイントを無理なくふまえて、春の蒸し料理を作っていくことにしましょう!
▼材料(フライパン20~25センチ1個分=約4人分)
漬け魚(西京漬け、粕漬けなど) 2~3切
お好みの野菜(※) 5~8種
オリーブオイル 大さじ2
めんつゆ(濃縮タイプ) 大さじ2
水 100ml
※ここではキャベツ、菜の花、紅芯大根、蓮根、スナップえんどう、にんじん、ブロッコリー、パプリカ、マッシュルームを使用。お好みの野菜やありもの野菜で自由にアレンジしてください。
▼作り方
①野菜は食べやすい大きさに切り、火が通りやすいもの(菜の花、スナップえんどう、ブロッコリー、パプリカ、マッシュルーム)と通りにくいもの(キャベツ、紅芯大根、蓮根、にんじん)に分ける。漬け魚は好みの大きさに切り分ける。
②フライパンに火の通りにくい野菜と漬け魚を並べて、水、オリーブオイル、めんつゆを回しかけて蓋をして火にかける。火加減は強めの中火で8分加熱する。
③いったん火を止めて蓋を開けて、残りの野菜を乗せる。蓋をして再び5分加熱する。火加減は同様。
④お好みの器に盛り付ければ完成。
カラフルな器に盛ればさらに気分が華やかに。
文・写真 スギアカツキ
撮影(タイトル、スギさん) 石原敦志