【Q】妊娠すると赤ちゃんにカルシウムが取られてむし歯になると聞きました。本当ですか?
【A】妊娠中にむし歯になりやすいのは本当です。ですが、お母さんの歯のカルシウムがおなかの赤ちゃんにとられるわけではありません。
カルシウムは私たちの骨や歯を形成する重要なミネラル。人間の体内のカルシウムの99%は、骨や歯にあります。それ以外にも、筋肉の収縮、さまざまな酵素の反応、血液の凝固、正常な心拍リズムの維持などに関わっています。
おなかの中にいる赤ちゃんは、お母さんの胎盤からへその緒を通してカルシウムを受け取ります。乳歯の芽である歯胚は、妊娠7週目頃から作られます。妊娠4ヶ月頃からは、歯胚にカルシウムやリンなどが沈着し、かたい歯が作られていきます。
胎盤には、おなかの赤ちゃんに必要な量のカルシウムを積極的にお母さんの血液からへその緒(子どもの血液)へと移す仕組みがあります。妊娠すると、お母さん自身の血液中に不足するカルシウムを補って一定にするために、小腸でのカルシウムの吸収が促されます。それでも足りない場合は、お母さんの骨から血液へカルシウムが移されます。
ですが、お母さんの血液中のカルシウム量を保つために歯からカルシウムが溶け出すことはありません。妊娠中はむし歯や歯周病になりやすいことは確かですが、その理由は歯のカルシウムが赤ちゃんに与えられたためではなく、妊娠中のカラダや食生活などの変化であると考えられています。
妊娠すると、唾液の分泌量が減ったり、唾液が酸性化したりする人もいます。唾液には、お口の中を洗浄・抗菌する働きや、pHを一定に保つ働きがあり、むし歯を防いでいます。つまり、唾液の減少や酸性化は、お口の中の環境の悪化につながります。
妊婦さんは、つわりや疲労などにより、食生活や生活習慣が変わりがち。食事を小分けにとる、間食が増える、歯みがきの回数が減るなどで、歯の汚れや歯石がたまりやすくなります。また、間食の増加や嘔吐などで、お口の中が酸性に傾くと、歯が溶けやすくなります。
このような妊娠中のさまざまな変化により、「妊娠すると歯が悪くなる」「一子を得ると一歯を失う」という言葉が生まれたといえるでしょう。
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