ビタミンDは、骨やカルシウムの代謝に必要な脂溶性ビタミンです。食べ物から摂取するほか、日光を浴びると皮膚の中でも作り出すことができます。
<ビタミンDの主なはたらき>
最近では、ビタミンDがカルシウム代謝だけでなくアレルギーにも関係があるという報告もあります。
多量のビタミンDを数ヶ月間摂ると、体調不良(食欲減退、吐き気、嘔吐)、強いのどの渇き、排尿の増加などが起こります。ですが、通常の食生活では、ビタミンDの過剰摂取は起こりにくいとされています。
妊娠中にビタミンDが不足すると、赤ちゃんの骨の形成に影響を与え、生まれた赤ちゃんの将来の骨量が低くなるという報告があります。
ビタミンDの不足で発生しやすいのは、生まれた赤ちゃんのくる病です。くる病とは、骨に軟化や痛みが起こり、骨が曲がりやすくなる病気です。乳児の場合は頭蓋骨がやわらかくなり、骨の正常な成長が妨げられ、座ったりはいはいしたりといった動きができるまでに時間がかかります。成長すると、O脚やX脚、脊柱の湾曲などとして現れます。
このように、健康な骨や歯の形成に欠かせないビタミンD。妊娠中に摂取すると、低出生体重児のリスクが減少する可能性があることがわかってきました。
アメリカやカナダの調査では、妊婦さんが食品から摂取するビタミンDの量が低い傾向にあるため、ビタミンDも含まれるサプリメントを常用することが推奨されています。
厚生労働省では、0~11カ月の乳児に必要なビタミンDの目安量を5.0μg/日に設定しています。ですが、母乳に含まれるビタミンDは約0.3μg/100gなので、母乳だけで補おうと考えると、毎日1リットル以上の母乳を飲まないといけない計算になります。
そのため、母乳で育てる場合は、ビタミンDを多く含む食品を意識して食べたり、サプリメントで補給したりする必要があります。
同時に、体調がよい日には、地域・季節・時間帯によって異なりますが、30分くらいを目安に日陰で過ごして日光を浴びる習慣を作り、皮膚の中でのビタミンDの合成を促しましょう。
部屋の中での日光浴は、UVカット機能のあるガラスが増えてきているので、窓を開けてガラスを通さない日光にあたるのがおすすめです。
ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、炒め物や揚げ物などの油を使った調理により吸収されやすくなる
<ビタミンDが豊富な食品>
母乳を飲んでいる赤ちゃんのビタミンD不足は国際的に課題となっています。また、平成29年国民健康・栄養調査によると、出産適齢期の女性の多くがビタミンD不足であることが分かっています。そのため、2020年、厚生労働省が発表する食事摂取基準では、非妊娠期も含め、妊娠中や授乳中のビタミンDの摂取目安量を、2015年基準より多い8.5μg/日に設定しています。
妊娠中や授乳中は赤ちゃんの骨と歯のために、その後はお母さん自身の骨軟化症や骨粗しょう症の予防のために、しっかり補給したいビタミンD。魚不足が気になる人は、サプリメントも活用するとよいでしょう。