赤ちゃんが口にしたものは、食道から胃に送られて消化と栄養分の吸収が行われ、その後、大腸へ運ばれて肛門から排泄されます。
飲んだものや食べたものが肛門に届くまでにかかるのは、約24時間。飲食したものが胃に入ると、大腸が刺激されて蠕動(ぜんどう)運動が起こります。この胃結腸反射(いけっちょうはんしゃ)をきっかけに、大腸の中のS状結腸という場所にたまっていた便が直腸に届き、うんちが出ます。
肛門の筋肉を自分の意志で締めたりゆるめたりできるようになるのは、およそ1歳以降とされています。赤ちゃんは自分で排便をコントロールできず、胃結腸反射によって排便します。そのため、母乳やミルクを飲むたびにうんちが出る赤ちゃんもいます。
4歳未満では、うんちが週に3回より少ない場合で、硬くて出にくい、おなかがはるなどの症状が続けば、便秘症と考えられます。
うんちの回数が少なくても、赤ちゃんの機嫌がよく、規則的なペースであれば、それほど問題ではない場合もあります。ですが、回数が極端に減った場合は注意が必要です。
赤ちゃんのうんちの回数には個人差があり、飲んだものや食べたものにも影響されます。母乳で育っている赤ちゃんの場合は、1日10回以上の排便をするケースも。離乳食をとるようになると回数が徐々に減っていきます。
うんちの回数だけでなく、うんちの硬さや色、ツラさにも注意しましょう。次のような場合も、便秘の可能性が高いといえます。
<便秘を疑うポイント>
このような様子に気づいたら、受診をおすすめします。特に、腹部膨満や嘔吐の場合は、すみやかに病院へ行きましょう。
ちなみに、赤ちゃんの便秘は離乳食の開始時期に起きやすいといわれています。
私たちの腸の中には、体内の菌(微生物)のうち約9割が存在するといわれています。腸内に棲む菌の集まりを、腸内フローラ(菌叢:きんそう)と呼びます。
赤ちゃんの腸内フローラは、母乳やミルクを飲むとともに、周りの環境からの影響も受けながら作られていきます。
悪玉菌が優勢になって腸内フローラのバランスが崩れると、発生したガスが充満しておなかの張りや臭いおならを引き起こすことがあります。もし、赤ちゃんのおなかが張っていたり、悪臭のあるおならが出たりしたら、腸内フローラが乱れているサインかもしれません。
赤ちゃんの便秘の改善方法はまだ確立されていませんが、赤ちゃんの様子を確認しながら次の方法を試してみましょう。
・マッサージ
赤ちゃんのおなかを大人の手のひらで「の」の字を描くようにマッサージしましょう。左足のつけ根の上にある「S字結腸」のあたりをやや強めに押すと効果的です。
・肛門刺激
オリーブオイルやワセリンを綿棒の先につけ、肛門の中に1センチほど入れ、回したり出し入れしたりしてみましょう。綿棒の刺激で、便意をもよおすことがあります。肛門を傷めないように、やさしくしましょう。
・母乳やミルク、食事の量を増やす
適切な食事量には個人差がありますが、母乳やミルク、食事の量が少なすぎると、うんちを作る材料が不足してしまう可能性があります。いつもおなかをすかせている様子なら、足りていないかもしれません。1~2週間ごとに体重の増加をチェックして、食事が十分かどうかを調べる方法もあります。
・水分の量をチェック
水分の摂取で便秘が改善するわけではありませんが、うんちをやわらかくして出しやすくする予防効果はあります。母乳やミルクを含めた水分が足りているかに注意してみましょう。
・果汁を摂る
離乳食をはじめた後の赤ちゃんには、プルーン・リンゴ・柑橘類などの果汁を薄めて飲ませてみるのもよいでしょう。
・食物繊維を増やす
食物繊維には、善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)を増やす水溶性食物繊維と、水分を吸収して膨張して便の量を増やすことで腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にする不溶性食物繊維の2種類があります。離乳食開始後は、野菜や果物、豆類、きのこ類、海藻類などを毎日の食事に取り入れて、バランスのとれた食事を心がけてください。
・ヨーグルトなどの発酵食品を摂る
善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)をふくむ発酵食品を摂ることで、症状が改善する可能性があります。離乳食をはじめた後は、様子を見ながら食べさせてみるのもよいでしょう。
赤ちゃんの便秘を改善するためには、まずは生活習慣の見直しからはじめることをおすすめします。それでも便秘の状態が1~2ヵ月以上続く場合はすみやかに医療機関を受診して、医師の指導のもとで下剤や浣腸を使いましょう。
※この記事で取り上げた便秘とは、疾患が原因の便秘ではなく、毎日の生活習慣などが原因による慢性的な便秘(慢性機能性便秘症)を指します。