ひとつのアレルギー疾患をきっかけに、ほかのアレルギー疾患を連鎖的に次々と発症していく現象を「アレルギーマーチ」と呼びます。
アレルギーマーチは、アトピー性皮膚炎を最初に発症することが多く、その後、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などが現れる傾向があります。また、乳幼児期にアトピー性皮膚炎になると、将来の気管支喘息とアレルギー性鼻炎の発症リスクが2倍以上、食物アレルギーの発症リスクが6.18倍も高くなることがわかっています。
もともと、乳児期のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーが原因であると考えられてきました。最近の研究では、アトピー性皮膚炎をはじめとした湿疹があるかないかがカギであることがわかってきました。
なぜそのようなことが起こるのでしょう。これまでの研究結果から、次のとおりに考えられています。食物アレルギーを例にとると、湿疹や乾燥など肌のバリアが乱れた状態で肌が食べ物に触れると、そこから侵入した成分がアレルゲンとなってアレルギーを発症します。しかし、食べ物として口から先に入ると、それに対するアレルギーを起こさないような仕組みが体内にあります。このように、食品由来のアレルゲン成分がどの経路でカラダの中に入ってくるかで、その後に起きる状況が違ってくる可能性が考えられています。
赤ちゃんがアトピー性皮膚炎を発症するかどうかや、発症するとしてもそれがいつになるかは誰にもわかりません。ひとつの目安として、生後4ヶ月頃の赤ちゃんの12.8%がアトピー性皮膚炎という報告があります。
また、アトピー性皮膚炎の患者さんの約65%が生後1年で発症し、約90%が5歳より前に発症するといわれています。赤ちゃんの頃のアトピー性皮膚炎の発症を防ぐことが、アレルギーマーチの効率的な予防法といえます。
アトピー性皮膚炎の発症を防ぐには、肌のバリア機能を高めるのが効果的です。そのために、次のようなスキンケアの習慣を身につけるとよいでしょう。
2018年度版の皮膚科学会ガイドラインによると、保湿剤を1日1回塗るよりも2回塗るほうが保湿だけでなく皮膚バリアを守るためにも有効だとしています。朝起きた時、おむつを替える時にカラダをふいた後、食事で汚れた口のまわりをふいた後などにもこまめに保湿しましょう。
我が国の赤ちゃんを対象とした最近の研究では、出生直後から肌の保湿を続けるとアトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性が示されています。新生児から使える保湿剤の多くは、デリケートな赤ちゃんの肌に配慮した刺激が少ない処方です。沐浴や入浴の後に塗ることからはじめてみましょう。