肌の乾燥や肌荒れを語る上で欠かせないのが、表皮の角質層です。
私たちの肌は、表皮、真皮、皮下組織の3層からできています。このうち、肌のバリア機能の80%を担うとされているのが、表皮の一番外側の角質層です。わずか0.02ミリ、ラップ1枚分ほどの厚さしかない角質層には、次のような物質が存在し、アレルゲンなどの異物侵入と水分の蒸散を防いでいます。
角質層の外側をおおう皮脂膜が不足すると、肌の内側の水分が逃げてしまい、乾燥肌になります。すると、かゆみを生じやすくなり、かいてしまうとさらに肌のバリア機能にダメージを与えます。
角質層の中が、天然保湿因子(NMF)と角質細胞間脂質でしっかり満たされていないことも、乾燥肌の原因です。外からの異物が入り込みやすい状態なので、アレルゲンが繰り返し侵入すると、アトピー性皮膚炎を引き起こす場合もあります。
表皮の細胞が角質層を作り出す段階を「角化」といいます。角化する前の顆粒細胞ではフィラグリンやロリクリンといったタンパク質が作られ、角化する時に細胞の外に出てきます。そして、フィラグリンはケラチンとともに角質層の構造を作り、ロリクリンはその構造体を補強します。やがて、表皮のターンオーバーとともに、フィラグリンは分解されて天然保湿因子(NMF)となり、角質層の水分保持というバリア機能にとって重要なはたらきを担います。
近年、アトピー性皮膚炎の要因のひとつとしてフィラグリン遺伝子の変異がクローズアップされており、実際、アトピー性皮膚炎患者では表皮のフィラグリンが少ないという報告もあります。
フィラグリンは正常な角質の形成に関わっていて、保湿成分の材料であることからも、アトピー性皮膚炎の要因に肌のバリア能と乾燥が関連していることがわかります。
バリア機能が未熟な赤ちゃんの肌にとって、空気の乾燥が悪い影響を及ぼしていると考えられる興味深い調査があります。
アトピー性皮膚炎を発症した人の生まれ月を調べたところ、5月生まれより、10月~12月に生まれた人のほうが、多く発症していたというものです。秋冬に生まれたら必ずアトピーになってしまうわけではありませんが、秋冬生まれの場合はどうしてもリスクが高くなると考え、赤ちゃんを迎えたらできるだけ早めに保湿する習慣をはじめて、バリア機能を高めましょう。