コラム
2019/11/30

肌の乾燥に大きくかかわる「角質層」の厚さはどれくらい?

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角質層の厚さはわずか0.02ミリ

肌の乾燥や肌荒れを語る上で欠かせないのが、表皮の角質層です。

私たちの肌は、表皮、真皮、皮下組織の3層からできています。このうち、肌のバリア機能の80%を担うとされているのが、表皮の一番外側の角質層です。わずか0.02ミリ、ラップ1枚分ほどの厚さしかない角質層には、次のような物質が存在し、アレルゲンなどの異物侵入と水分の蒸散を防いでいます。

  • 皮脂膜
    表皮の外側をおおい、水分の蒸散を防いでいます。

  • 天然保湿因子(NMF)
    主な成分はアミノ酸や尿素など。角質細胞内の水分をキープして、やわらかくうるおいのある肌に整えます。

  • 角質細胞間脂質
    セラミドなどが存在します。角質層の細胞と細胞の間を満たす脂質でバリア機能を発揮します。

肌が乾燥した状態とは?

角質層の外側をおおう皮脂膜が不足すると、肌の内側の水分が逃げてしまい、乾燥肌になります。すると、かゆみを生じやすくなり、かいてしまうとさらに肌のバリア機能にダメージを与えます。

角質層の中が、天然保湿因子(NMF)と角質細胞間脂質でしっかり満たされていないことも、乾燥肌の原因です。外からの異物が入り込みやすい状態なので、アレルゲンが繰り返し侵入すると、アトピー性皮膚炎を引き起こす場合もあります。

角質層の水分を保持するフィラグリンに注目

表皮の細胞が角質層を作り出す段階を「角化」といいます。角化する前の顆粒細胞ではフィラグリンやロリクリンといったタンパク質が作られ、角化する時に細胞の外に出てきます。そして、フィラグリンはケラチンとともに角質層の構造を作り、ロリクリンはその構造体を補強します。やがて、表皮のターンオーバーとともに、フィラグリンは分解されて天然保湿因子(NMF)となり、角質層の水分保持というバリア機能にとって重要なはたらきを担います。

近年、アトピー性皮膚炎の要因のひとつとしてフィラグリン遺伝子の変異がクローズアップされており、実際、アトピー性皮膚炎患者では表皮のフィラグリンが少ないという報告もあります。

フィラグリンは正常な角質の形成に関わっていて、保湿成分の材料であることからも、アトピー性皮膚炎の要因に肌のバリア能と乾燥が関連していることがわかります。

アトピーは秋冬生まれに多い!?

バリア機能が未熟な赤ちゃんの肌にとって、空気の乾燥が悪い影響を及ぼしていると考えられる興味深い調査があります。

アトピー性皮膚炎を発症した人の生まれ月を調べたところ、5月生まれより、10月~12月に生まれた人のほうが、多く発症していたというものです。秋冬に生まれたら必ずアトピーになってしまうわけではありませんが、秋冬生まれの場合はどうしてもリスクが高くなると考え、赤ちゃんを迎えたらできるだけ早めに保湿する習慣をはじめて、バリア機能を高めましょう。


 
監修/西川伸一(にしかわ しんいち)
医師、医学博士
1948年滋賀県生まれ。1973年京都大学医学部卒業。1980年ドイツ・ケルン大学遺伝学研究所留学。帰国後、京都大学胸部疾患研究所にて助手、助教授を勤めた後、1987年より熊本大学医学部教授、1993年より京都大学大学院医学研究科、分子遺伝学教授を歴任。2013年よりNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン代表理事に就任するとともに、2019年より一般財団法人サンスター財団会長に就任。
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