私たち人間のカラダの各部位に存在する細菌叢(細菌の集団)は、それぞれの部位でバランスを保つことで、健康維持に貢献しています。
お口の中には700種類以上の細菌が棲んでいます。お口の中の悪玉菌の代表格は、むし歯の原因菌であるミュータンス菌や歯周病に関与するポルフィロモナス・ジンジバリスやプレボテラ・インターメディアという菌です。
妊娠すると、お母さんと赤ちゃんの健康を守るために、女性ホルモンが大量に分泌されます。これにより、歯周組織では、毛細血管や免疫系に変化が現れます。
たとえば、前出の病原菌プレボテラ・インターメディアが女性ホルモンを利用したり、ポルフィロモナス・ジンジバリスが歯肉からの出血を利用したりして増殖します。妊娠中に歯肉炎になったり、悪化しやすくなったりするのは、このような女性ホルモンの変化で、お口の細菌叢バランスが崩れるからです。
歯周病は、歯周病菌に感染することで起こります。歯周病菌は、酸素を嫌う嫌気性(けんきせい)なので、自分たちの居心地のよい歯と歯肉(歯ぐき)の間(歯肉溝)に棲みついて増殖します。
歯肉溝は清掃しづらいため、歯周病菌が増殖しやすく、それにより歯肉溝が深くなると、歯周ポケットに進行してしまいます。プラークがたまった状態が続くと、4~11日後には一部の歯肉に炎症が起こり、2~3週間以内にお口全体に歯肉炎が広がります。
つまり、歯周病の発症を防ぐには、歯肉溝にプラークをためないのがカギ。「ハブラシやデンタルフロスによるプラークの除去」と「飲食の内容や摂取時間のコントロールによるプラークを増やさない習慣」のふたつの柱で、プラークコントロールを心がけましょう。
プラークコントロールが十分でない場合、増殖した細菌が口の中から血液を通じて全身に広がり、さまざまな病気のリスクを高めることも明らかになってきています。
妊娠中はお口の中の細菌叢のバランスが変化しやすいうえ、食生活や体調の変化で十分に歯みがきができないことも多く、口腔内環境が悪化しがちです。
プラークをためないためには、毎食後の歯みがきがおすすめです。ですが、つわりなどで無理な場合は、無理をせずにマウスウォッシュや水でお口をすすぐ、水分を多めにとるなど、できることから取り入れてください。
つわりがおさまったタイミングでこまめに歯をみがくことも大切。下記を意識しながら歯と歯肉の間をみがいてください。
ダラダラと飲食するのをやめる、食後に水やお茶を飲むといった習慣も、プラークをためにくくするコツです。
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