2021年がはじまりました。みなさんにとってこの1年が、楽しく、おいしく、健やかでありますよう心から願いつつ、私、スギアカツキの連載をはじめさせていただきたく思います。テーマ名は、「わたしが好きになる魔法のレシピ」。
今年の目標を、「料理上手になる」としている方もいらっしゃると思いますが、私にはもっと大切にしていただきたいことがあります。それは、上手になることよりも、「料理を楽しむ・食を楽しむ」という、もっと気軽で自由なモチベーション。気負うことなく料理を楽しむことこそが、毎日の生活に潤いを生み出し、ポジティブで好奇心あふれる心身を作ってくれると考えています。
そして気がつくと、自分のことが好きになっている。私はそんな魔法をふわりとかけられるような連載を続けていければと思いますので、みなさんも気分を楽にしておつきあいくださいね。健康の話も食の話も、固定概念やルールに縛られ過ぎずにいきたいものです。
スギアカツキ
食文化研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学・栄養学・発酵学・微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究をはじめる。現在は「食文化研究家」として、TV・ラジオ・雑誌・ウェブなどの多方面で活躍中。
第1回のメニューは、「お雑煮」。この時期、お正月の餅が冷蔵庫にたくさん残っているご家庭も少なくないでしょう。餅はほかの主食(パン・ごはん・麺類)に比べて消化に良く、胃に優しいのが特徴。胃腸が疲れている日にも食べやすいですよね。
そうです、餅が入った具沢山の汁物はお正月だけの献立ではありませんから、具材をうまく組み合わせれば、ヘルシーなのに栄養価が高く、満足感のあるごちそうになるのです。また、故郷の味や我が家の味を守らなければならないというプレッシャーからも解放されるでしょう。
そこで今回は、そんな栄養たっぷりなお雑煮を気軽に作るポイントを4つお伝えしつつ、日常におすすめしたい「デイリー雑煮」のレシピをご紹介したいと思います。
ポイント①糖質の代わりに、「たんぱく質」をたっぷり加える
健やかなカラダを作るベースとなるのが、たんぱく質。ヘルシーバランスのコツは、餅(糖質)を控えめにしながら、たんぱく質の具材を増やすこと。必ずしも肉である必要はなく、卵だって好相性。ゆで卵や温泉卵、残った錦糸卵などをたっぷり乗せてみてください。
ポイント②抗酸化作用のある「青菜」を、自由に選ぶ
たんぱく質の次に意識していただきたいのが、野菜。中でも抗酸化作用を持つ緑黄色野菜を積極的に取り入れてみましょう。もっとも簡単なのが、ほうれん草、小松菜、春菊などの青菜。これらは電子レンジで加熱すれば比較的簡単に準備をすることができます。
ポイント③食物繊維が豊富な「イモ類」を加える
同じ炭水化物が豊富な食材であっても、餅を減らしてイモ類を加えると、整腸・腸活になる「食物繊維」が摂取できます。おなじみの里芋は皮むきタイプが冷凍食品で活用できますし、普段お雑煮の具材としては馴染みのないさつまいもやじゃがいもを加えても目新しいおいしさを楽しめるでしょう。
ポイント④無理ない型抜きや飾り切りで、“食べる喜び”を演出する
花や動物の形をした人参や大根を目にして、嬉しくなったことはありませんか?包丁で飾り切りをするとなると、それなりのテクニックが必要ですが、型抜きを使えば誰でも簡単に演出が可能。また、かまぼこの飾り切りは、竹串や爪楊枝を使ってできるものが多いので、お好みのタイプをネット検索しながら挑戦してみるのも楽しいかもしれません。
最後に、器やテーブルコーディネートのアイディアについてですが、私は必ずしも漆器が最高だとは思っていません。自分の中で気分が上がるような色や質感の陶器を選んで自由な盛りつけを楽しんでみてください。今回は広めの多様鉢(磁器)をチョイス。水色と赤色で随分印象が違いますよね。テーブルマットやお箸置きも頑張り過ぎないのが、長く楽しむコツ。掃除のしやすさやコストパフォーマンスを考えて、無理ないものを選んでみてくださいね。
さあ、それではこれらのポイントを自由に組み合わせて、自分だけの味を作ってみましょう。
▼材料(2人分)
餅 2個
鶏肉 100g
卵のトッピング(ゆでたまご、温泉卵、錦糸卵) お好み量
青菜(ほうれん草、小松菜、春菊など) 1束
イモ類(里芋、さつまいも、じゃがいなど) 里芋なら2個
さつまいもなら5センチ分
じゃがいもなら中玉1個
人参 3センチ分
大根 3センチ分
かまぼこ 4枚
だし(※) 1L
しょうゆ 大さじ4
酒 大さじ2
みりん 大さじ4
※1Lは2人分以上ですが、多めに作っておくと、2回楽しめます。本格的にだしをとるのもよいですが、気軽にだしパックなどを活用しても十分おいしく仕上がります。
▼作り方
①鶏肉は小口切りにしてしょうゆ大さじ2、酒大さじ2に漬けておく。卵のトッピングを準備しておく。
②青菜は茹でるか電子レンジで加熱して水気を絞って3センチ長に切りそろえる。人参と大根は薄切りにして型抜きで成型する。かまぼこは飾り切りをする。イモ類は必要があれば皮をむいて一口サイズに切って準備する。
③鍋にだしと残りの醤油とみりん、イモ類を加えて火にかける。沸騰したら弱火に落とし、イモに火が通る(5分程度)まで加熱する。さらに人参と大根を加えて3分煮る。
④餅を焼く。鍋は火加減を中火にして、鶏肉を漬け汁ごと加える。アクが出てきたら丁寧にすくう。
⑤鶏肉に火が通ればOK。火を止めて、お好みのお椀に具材と餅を飾り、熱々の汁をたっぷりかければ完成。
文・写真 スギアカツキ
撮影(タイトル、スギさん) 石原敦志