9月1日は防災の日。地震や水害などだけでなく、さまざまな可能性を考えて、日ごろから備えておきたいものですね。ただし、緊急の状況で必要なものといっても、イメージが湧かないもの。そこで危機管理教育研究所の国崎信江さんに、防災用品の備え方をお伺いしました。
今回は、主婦代表として、3歳の息子と夫の3人で暮らす古庄香哉さんと対談をしていただき、家庭でそろえている防災グッズをチェックしていただきます。
プロフィール
- 国崎信江(くにざき のぶえ)
- 株式会社危機管理教育研究所代表/危機管理アドバイザー
阪神淡路大震災をきっかけに、防災の危機管理を研究し、著作なども多数。2020年4月より、YouTube『国崎信江のキキカンリTV』をスタート。危機管理に役立つ情報をわかりやすく発信している。
- 古庄香哉(ふるしょう かや)
- 3歳2か月の息子、夫と3人でマンションに暮らす専業主婦。防災グッズや備蓄品を最近そろえたものの、家族を守るために十分なのか気になっている。
日常生活に必要なものに、ライフラインが途絶えたことを想定してプラス
子どもや家族を守るためにも、防災用品を用意しておきましょう。
災害があっても家族を守るために、しっかり備えておきたいと思います。でも、スペースには限りがありますし…。どんな考え方で防災グッズを用意すればいいのでしょうか。
基本的には、海外旅行の荷物を厳選するようなイメージで、ライフラインが途絶えた時に必要なものをプラスします。
ライフラインが途絶えた時というのは、具体的には…?
電気、ガス、水道です。電気が切れたら、明かりが必要ですね。私は懐中電灯より、両手が使えるヘッドライトをおすすめしています。ガスはカセットコンロ。水道は飲料水と思ってください。それから、水が使えないだけでなく流せなくなることもあるので、簡易トイレも必要です。
防災グッズは、避難所で過ごすことを想定して用意しておくといいのでしょうか?
ハザードマップで地域の危険度を知り、自宅の環境から避難すべきなのか、自宅で過ごせそうかを考えます。避難を前提とした防災グッズの持ち出し方も、自分の行動をイメージして備えます。例えば、いざというとき古庄さんは、普段使っているカバンと非常用袋、どちらをとっさに持ち出しますか?
…そういわれると、お財布やスマートフォンなどが入っている、普段のバッグを持っていく気がします。
そういう方が多いんです。そういう方は、防災グッズとは別に、普段のバッグにも最低限の防災用品を入れておくことをお勧めしています。比較的コンパクトに収まるグッズを選びましょう。
防災用品、備蓄は3パターンで用意して
できれば、3パターン用意しておくとあらゆる状況に対応できます。緊急時にすぐ必要なものを普段のバッグに、避難所に持っていくようなものを防災リュックに、家で過ごすためのものを自宅の備蓄品として置いておきます。自宅のものは家庭内流通備蓄として、普段使うものを多めにストックしておき、消費したら補充することで無駄がなくなります。
まず、普段のバッグに最低限用意しておくものから教えていただけますか。
私がいつものバッグに入れているのは、次のようなものです。
1.簡易トイレ
2.モバイルバッテリー
3.止血パッド
4.ゼリー飲料
5.ヘッドライト
6.ハブラシ
7.生理用品
けっこうかさばりませんか?
モバイルバッテリーやゼリー飲料はやや重くてややかさばりますが、それ以外はコンパクトですよ。
防災リュックや備蓄品はいかがでしょうか。
我が家では防災リュックではなく、家族ひとり分ずつ、防災ベストに入れています。
え、それはなぜ…?
子どもをおんぶして避難することもありますよね。そんな時に、リュックを持つのは難しい。だけど、ベストなら両手も使えるし、おんぶもできます。子どもが中学生や高校生になり大きくなっても、けがをしたらおんぶすることもありえます。だからひとりずつの用具を防災ベストに入れているんですね。
それは目からうろこです。ベストにどれくらい入るのでしょうか?
それぞれ、一日分くらいですね。水は重いので、少な目にはなります。避難の導線に置いておくようにしたいので、玄関横にある収納のコート掛けに掛けてあります。
それぞれの内容や備蓄品については、具体的に古庄さんの用意されているものを見ながらチェックしていきましょうか。
はい、お願いします。
朝昼晩の食事をイメージするとGOOD
こちらが、リュックに入れているものです。防災用に買うと高いので、夫がキャンプ用に持っていたリュックサックや寝袋を兼用しています。避難所では温かいものを食べたいだろうと思って、ガスコンロなども用意しました。あとは子ども用のおもちゃと、体温計、薬などですね。
前に並べているものをリュックに入れ、それ以外に家族が寝られる寝袋を用意。
子どものために、おもちゃやジュースも用意している。
しっかり用意していてとてもいいですね。お水は入っていませんか?
はい、別の場所に備蓄しているので、それを入れようと思っています。
1本くらいは入れておいてもいいかもしれませんね。ラーメンやみそ汁は調理用水がないと食べられないので。ただ、避難所はほとんど火気厳禁なんですよ。
え、そうなんですか!?使えるのかと思ってました…。
使えるとしても、食べ物を持ってこなかった人たちの目があるから、調理するのは難しいかもしれません。あと、朝昼晩で食べるもののイメージはありますか?
朝ご飯はカロリーメイトとゼリー飲料、昼は缶詰で、夜は…うーん。正直、そこまで考えていませんでした。
朝昼晩の食事のメニューを考えれば、何をどれだけ用意するのかイメージが付きやすいと思います。缶詰は、汚れたごみが出るので扱いにくいかもしれませんね。また、箸やスプーンが不要なもののほうがいいです。
なるほど。それから、避難所で気持ちよく過ごすために、オーラルケア、カラダのケアなども気になります。
液体ハミガキ、ハブラシがあるといいですね。液体ハミガキは、まずは日々のお手入れに使ってみて、使い方に慣れておくのも大切です。(
詳しい方法はこちら)カラダは、赤ちゃん用のおしりふきで拭くとすっきりしますよ。簡易トイレは必ず入れておきたいですね。避難所に行っても、すぐに仮設トイレが用意されることは少ないです。あっても数時間並ばないといけなかったり。
ほかに、加えるものはありますか?
タオルとヘッドライト、給水袋があるといいですね。水が配られた時に、入れるものがないと困るので。
家庭内流通備蓄は、好きな飲み物も忘れずに
家庭内流通備蓄としては、飲料水のほかに、ロングライフ牛乳、ポンジュースなどを置いています。
家庭内流通備蓄として、普段飲むものを多めに買ってストックしている。
我が家とほぼ同じですね。とてもいいと思います。水ばかり飲むご家庭でなければ、普段好んで飲むものを箱買いして、2箱ずつくらいストックしておくといいですね。
できるだけスペースを空けて、備蓄しておきたいですね。
簡易トイレは、自宅用にもあったほうがいいですね。災害後は、しばらく水を流せないことがあるんですよ。
そうなんですね。普段のバッグと防災リュック、備蓄品を改めて見直してみます。とても勉強になりました。ありがとうございました!