こんにちは。サンスター研究員の関根です。
研究員が教える豆知識 第3弾の今回は、糖尿病と歯周病の関係についてご紹介します。
2016年に、こちらの「糖尿病とうまくつきあう」サイトをご利用いただいているみなさんに、お口の中の気になる症状などに関するアンケートにご協力いただいたところ、「歯に隙間ができてきた」、「ハグキから出血する」といった症状を気にしているとお答えいただいた方が多くいらっしゃいました。
糖尿病とお口は別のもの、関係のないものと思われがちですが、これらは、実は歯周病の代表的な症状なのです。
今回は、無関係なようで実は深い関係がある、『糖尿病と歯周病の関係』について、ご紹介します。
糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが足りなくなったり、十分に働かなくなったりすることで、食べたものが分解されてできた糖分が体にうまく吸収されなくなり、血液中に糖分があふれることで血糖値が高い状態が続いてしまう病気です。
一方、歯周病は歯のまわりの組織(歯周組織)の病気で、細菌によって引きおこされる感染症です。ハグキが赤く腫れたり出血したりしますが、進行するとハグキだけでなく歯を支える骨まで破壊され、歯がグラグラ揺れてしっかりと噛めなくなり、最後には歯が抜けてしまいます。
一見、関係がなさそうな糖尿病と歯周病ですが、最近では、腎症、網膜症、神経症などとともに、歯周病も「糖尿病の合併症のひとつ」と言われています。
糖尿病による血糖値の高い状態は、全身の炎症を起こすことが知られています。
食事によって取り込まれた栄養は糖分として血液を介して全身に届けられますが、血糖値が高い状態がつづくと、血液中のタンパク質と糖分が結合してしまいます。この反応により、終末糖化産物(AGEs)と呼ばれる物質がつくられます。このAGEsは炎症の原因となる物質であり、糖尿病になり血糖コントロールの悪い状態が続くとAGEsが蓄積し、全身に炎症が起きるのです。
糖尿病によって蓄積したAGEsは、全身の「炎症」はもちろん、口腔にも影響し、歯周病の炎症を悪化させてしまいます。
さらに、糖尿病による炎症は、体内の防御反応を低下させるため、感染症にかかりやすくなってしまいます。その結果、歯周病原菌による感染症である歯周病も起こりやすくなってしまうのです。
一方で、歯周病によりハグキの中で作り出される炎症物質は、血液を介して血糖をコントロールするホルモンであるインスリンの働きを妨げ、糖尿病を悪化させる可能性があります。
つまり、糖尿病と歯周病は、共通の症状である「炎症」を介して、お互いに悪影響を与え合っているのです。
歯周病の治療をすることが歯周病の改善に効果があるのは当然ですよね。では、歯周病の治療は糖尿病にも効果があるのでしょうか?
生活習慣や遺伝が主な原因となり発症する2型糖尿病では、インスリンの働きが悪くなるのですが、歯周病の治療を行うことでインスリンの働きが改善することや、HbA1Cが低下することなどが報告されています。このような最近の研究結果から、糖尿病の血糖コントロールに歯周病治療が重要であることが認識されてきています。
歯周病は放っておくと歯が抜けてしまうことも。
これからもずっとおいしく食事をしていくためには、歯周病ケアをして歯を守ることが大切です。糖尿病患者さんの場合、歯周病のケアは歯を守るだけでなく、糖尿病の状態をよくすることにもつながります。お口と身体の両方の健康のために、日々の歯周病ケアをしっかりと行うことと定期的な歯科受診が重要であることをぜひ皆さんに知ってもらいたいのです。
サンスターでは、まず糖尿病による死亡率が高い徳島県で、徳島県歯科医師会と連携し、歯周病ケアや定期歯科検診の推進などの啓発活動を始めています。
糖尿病患者さんが、お口と身体両方にとって健康な生活を送っていけるためのお手伝いができるように、サンスターは様々な取り組みを進めています!