ウイルス、真菌による口内炎～がん治療中の方へ～

がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。

口内炎（口腔粘膜炎）はいろいろな原因によって生じます。がんの治療中には抗がん剤副作用以外にも、ウイルスや真菌（カビ）の感染が原因で生じる口内炎（口腔粘膜炎）があります。骨髄抑制期や、免疫抑制剤、ステロイドや抗菌薬を長期に使用している時に発症しやすいようです。それぞれの特徴を紹介しますので、抗がん剤の副作用で生じる口内炎（口腔粘膜炎）とは異なった症状がありましたら、医師に相談しましょう。

① ウイルスによる口内炎（口腔粘膜炎）

単純ヘルペスウイルス感染：
・口唇周囲に小さな水疱（みずぶくれ）を多数作り、やぶれて潰瘍となる。
・初期症状は、唇や口の周りの皮膚にピリピリ・ムズムズした不快感や痛がゆさがある。その後、数時間から数日で患部に皮膚の赤みや水ぶくれができる。やがて水ぶくれは破れてかさぶたとなり、２週間程度で治る。
・過去に口唇ヘルペスを発症したことがある方は、がん治療中に再発しやすく、これまでより症状が長引きやすい。
・がん治療中で免疫が低下している方では抗ウイルス薬の治療が行われることがある。

帯状疱疹ウイルス感染：
・口の中に水疱を形成し、炎症性の赤みを伴った潰瘍となる。
・全身に起こる皮疹から発見されることもある。
・神経に感染し、神経痛のような痛み、知覚の異常あるいは痒みが数日から１週間続き、やがて虫さされのような皮膚の赤みと膨らみが出る。この時期に発熱やリンパ節の腫れ、頭痛などがみられることもある。その後、水ぶくれが多発し破れてかさぶたとなり、２週間程度で治る。神経痛のような痛みが残る場合は、痛みへの対応が必要（鎮痛剤の内服）になる。
・がん治療中で免疫が低下している方では抗ウイルス薬の治療が行われることがある。

EBウイルス感染：
・表面に白い膿のようなものがついた扁桃炎が生じる。
・口以外の症状としては、１週間近く続く38℃以上の発熱、リンパ節の腫れがある。治療の特効薬はなく、通常は抗ウイルス薬の投与がなくても治るが、がん治療で免疫が低下している方では抗ウイルス薬の治療が行われることがある。

②真菌による口内炎（口腔粘膜炎）

真菌とはいわゆるカビのことで、真菌による口内炎（口腔粘膜炎）の原因は主にカンジダ真菌です。

・舌や頬、歯ぐきや上あご～のどにかけての粘膜に、白いカッテージチーズに似たようなものがついている。
・味覚がおかしい。
・唇の端が荒れて（口角炎）、長く治らない。
・舌が乾燥して真っ赤になりピリピリ、ヒリヒリした弱い痛みが長く続く。
・義歯（入れ歯）の下の歯ぐき、粘膜が真っ赤になっている。

真菌はもともと口の中にいるので多くの人が感染していますが、体調が良い時にはカラダの抵抗力が勝っているため症状がありません。免疫力が下がったり、口の乾燥が強くなったりした時に症状が出ます。うがい、粘膜の清掃や保湿、義歯清掃などで良くなることもありますが、抗真菌薬で治療をすることもあります。造血幹細胞移植で免疫を強く抑えている方や、糖尿病の方など感染に弱い方では、口内炎（口腔粘膜炎）とともに熱や鼻詰まりなどの強い症状が出る場合があるので、必ず主治医に相談しましょう。

こんな時は要注意

がんの治療に伴ってできる口内炎（口腔粘膜炎）は骨髄抑制期から回復すると治っていきます。一方、ヘルペスや真菌は、プツプツとした膨らみができたり白い汚れがつくなど、治療の経過でできる口内炎（口腔粘膜炎）とは症状が異なったり、治りが悪いことがあります。気づいたことは主治医やがん専門の看護師に相談しましょう。がん治療中の方の口腔の診察、ケア（周術期等口腔機能管理）を行う歯科を受診することもお勧めします。