がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。
お口の中が痛むことは、食べること・話すことなど日常生活に支障をきたす症状です。そのため、痛みは我慢せずに早めに対応したいですよね。
まず、お口の中がザラついた感じやはれぼったい感覚がある時は、医師や看護師に相談をしてください。
お口の中は敏感なので、口腔粘膜炎(口内炎)ができてしまうと痛みを感じやすくなります。
痛みによって食べることが難しいといったことにならないように、今回は、お口の中の「痛みの緩和」についてお伝えしていきます。
基本的には、WHO(世界保健機関)のがん治療ガイドラインに準じて痛みを取り除いていきます。痛みを緩和する目標としては三段階あり、第一目標から順番に緩和していきます。
第一目標:痛みに妨げられない夜間の睡眠
第二目標:安静時の痛みの消失
第三目標:体動時の痛みの消失
まずは、痛みを取り除いて睡眠が取れるようにという目標があげられます。
お口の場合は、第二目標の「安静時」が食事や会話をしていない時、第三目標の「体動時」は食事や会話をしている時という解釈をされてもよいかもしれません。
さらに、痛み止めを使用する際は、まずはなるべく局所(痛みがある部位にピンポイントに)に効かせていくことを考えます。もちろん全身に効果があるような痛み止めを使用することも間違いではありません。敏感なお口の中は、丁寧に痛みを取り除いてあげることが必要なので、痛みを我慢しないで積極的に痛み止めを使って快適に過ごしましょう。
これらの痛み止めには、薬ごとに特徴があり、患者さんの痛みの程度やカラダの状態、副作用の様子をみながら、医師をはじめ、看護師や薬剤師が相談をして決めていきます。
日本人の文化として、「痛みは我慢するもの」や「薬はなるべく飲まないほうが良い」という独特の美徳があります。私が接する患者さんでも、痛み止めの内服を極力避けて痛みを我慢して生活をする方がおられます。近年の調査でも、長く感じる痛みを我慢すると答えた方が74.1%となりました。
中でも、<医療用麻薬>に関しては、誤解をしやすい方も多いと思います。
<麻薬>という言葉にはなりますが、医療用として処方をして内服する薬であり、確実なガイドラインに基づいて処方や調整をされていますので、医師や看護師の指導をしっかり守って使用することで痛みが緩和されていきます。お口の痛みを我慢せず、積極的に痛み止めを使用し、早めに対処をすることで痛み止めを長期に使用しなくてもよい状態になります。または、局所で使用する薬剤に切り替えることも可能です。
食事をする時間や大事なことがある時間から逆算して、痛み止めの効果発現がみられる時にあわせます。お口に直接作用するキシロカインなどは味覚も含めて麻痺した状態になるので、味がわからなくなることもあります。また、感覚が鈍くなっているので咀嚼時に頬の粘膜を咬まないように気を付けて下さい。医療用麻薬を使用している場合には、定時内服のほかにレスキューと呼ばれている頓服薬がありますので、食事の前やお口のケアの前から時間を逆算して使用してみてください。
痛みを表現する時によく使われる指標は、「0~10までの数値で表す」指標です。
0を「全く痛みがない」、10を「自分が考える中で最も痛い状態」として、患者さん自身の言葉で痛みの程度を数値化してもらいます。痛み止めが効かない場合は、医師に相談の上で増量やほかの方法に切り替えます。また、指標の数値はレスキューを内服した前後でどの程度効果があったかを医療者に伝える時にも重要になるので、「5くらいの痛みが2まで下がった」と伝えてもらえると、医師も次の手を考えることができます。
痛みが強い時に、「数字で表現してください」といわれても混乱することが多いので、今のうちから賢く伝える方法を知っておくことも痛みの緩和には必要です。
<参考文献>
日本緩和医療学会:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン,金原出版,2014
余宮きよみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本,医学書院,2019
国立がんセンター内科レジデント:がん診療レジデントマニュアル,医学書院,2019
宮野加奈子他:抗がん剤治療による口内炎に対する半夏瀉心湯脳効果~明日の口内炎患者
のために~,薬理日誌146,76-80,2015
ファイザー株式会社:「長く続く痛みに関する実態 2012年/2017年経年比較調査」https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2017/documents/2017082301.pdf(最終アクセス11月23日)
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