[図1]を見ると、1965年くらいまで糖尿病有病率がほとんどありませんよね。糖尿病は「贅沢病」といわれ、飽食する人がかかるものと考えられていました。
これが1968年ごろから急激に増加していきます。なぜ増加したのか調べていて、私たちは同じ時期「急激に減少」した大麦や雑穀などの穀物摂取量に注目しました。大麦や雑穀に多く含まれているけれど小麦や白米では少ないものは何か…。ここからMgと糖尿病の関係を疑いました。
2型糖尿病や生活習慣病予防のため最近注目されているのがマグネシウム(Mg)。長年糖尿病とMgの関連を研究してきた横田先生は「慢性的なMg摂取不足を解消すれば、糖尿病の増加を抑えることができる」と、今年5月の第55回日本糖尿病学会で発表、メディアに取り上げられました。
Mgが2型糖尿病に効果的、というお話は初めて聞きました。
実は糖尿病とMgの関係は以前から研究されています。諸外国での臨床疫学的に「Mg摂取量と2型糖尿病発症リスクに(負の)相関がある」という論文はいくつもあったのですが、私は2004年に仮説を立て、その仮説を実証する多くの論文がそろったのをきっかけに根拠をまとめ、今年5月に学会で発表しました。欧米人と比べてインスリンを出しにくい体質の日本人にとって、Mgはとても大切なんですが、欧米人と比べても日本人の摂取量はまだまだ少ないですね。
でも、戦後は食生活が欧米化してきましたよ。
ということは、日本人の体質に合わない食生活が今日に至るまで続いていると言うことなんです。私は日本人に糖尿病予備群が増えた理由は「インスリンを出しにくい体質」という遺伝的要因を背景に「食生活の変化」という環境的要因にあると考えています。調べてみると、戦前まで糖尿病にかかる日本人はとても少なかったんですよ。
えっ、そうなんですか。
図1:糖尿病推定有病率と生活環境の推移
[図1]を見ると、1965年くらいまで糖尿病有病率がほとんどありませんよね。糖尿病は「贅沢病」といわれ、飽食する人がかかるものと考えられていました。
これが1968年ごろから急激に増加していきます。なぜ増加したのか調べていて、私たちは同じ時期「急激に減少」した大麦や雑穀などの穀物摂取量に注目しました。大麦や雑穀に多く含まれているけれど小麦や白米では少ないものは何か…。ここからMgと糖尿病の関係を疑いました。
脂肪やエネルギーの取りすぎが糖尿病につながる、とよくいわれていますが。
たしかに医学界でもそれが定説になっています。しかし厚労省のデータを詳しく検討すると、実は脂肪やエネルギー摂取量は1996年ごろから下がっていることがわかりました([図1]参照)。でも糖尿病予備群は増えていますよね。この点からも「Mg不足が糖尿病のリスク要因」という仮説(マグネシウム仮説)が成り立つと考えたんです。
今までのMg研究で、糖尿病との関係は実証されているんですか?
はい、我国の最新の疫学研究でも示されました。具体的には、福岡県の久山町で1988年から21年間1999人を追跡調査した研究で「Mg摂取量が増加すると2型糖尿病の発症リスクが有意に低下(37%)する」という結果が出ました(注1)。
すごいですね! Mgとはどんな栄養素なんでしょうか。
人間には必須で、主要なミネラルといわれるものが7つあり、Mgはその中の1つです。ほかにはカルシウム、カリウム、ナトリウム、リン、硫黄、塩素がありますが、ナトリウム(塩分)はすでに取りすぎていて減らすべきミネラルですね。もう少し摂ったほうがよいのがカルシウムとカリウム、もっともっと意識して摂るべきなのがMgなので、日本人にもっと積極的に摂取して欲しいですね。
Mgと糖尿病はどう関連しているんでしょうか?