また、細胞は常にカリウムやカルシウム、ナトリウムを出し入れしていますが、Mgは、出し入れするポンプの働きをなめらかにする作用があります。このポンプが活発になるとエネルギーが消費されるので、ブドウ糖の消費にもつながります。
2型糖尿病や生活習慣病予防のため最近注目されているのがマグネシウム(Mg)。長年糖尿病とMgの関連を研究してきた横田先生は「慢性的なMg摂取不足を解消すれば、糖尿病の増加を抑えることができる」と、今年5月の第55回日本糖尿病学会で発表、メディアに取り上げられました。
Mgは、体中のインスリンの作用を応援する役割を持っています。つまりインスリンの感受性を正常に保つように働きます。
もう少し詳しく教えていただけますか。
糖の代謝について少し説明しますね。人が食物を摂取すると腸からエネルギー源であるブドウ糖が吸収され、ブドウ糖は血液中に入ります。インスリンが細胞に働きかけてブドウ糖が細胞に取り込まれると、血液中のブドウ糖濃度が低くなります。
はい、これが「血糖値が下がる」状態なんですよね?
そうです。Mgは、細胞がブドウ糖を取り込む際の酵素チロシンキナーゼの働きをよくします。インスリンが細胞に働きかけ、ブドウ糖が細胞に入りやすくなります。その結果、血糖値が下がりますよね。
なるほど。
図2:細胞内外の働き
また、細胞は常にカリウムやカルシウム、ナトリウムを出し入れしていますが、Mgは、出し入れするポンプの働きをなめらかにする作用があります。このポンプが活発になるとエネルギーが消費されるので、ブドウ糖の消費にもつながります。
Mgは細胞レベルの運動を活発にしてくれるんですね。
Mgは血管の働きにも作用しています。Mgが不足すると血管が収縮してしまい、血圧が上がるんです。Mg不足は交感神経の緊張状態を作るので、神経という面からも高血圧につながってしまいます。また血液成分の柔軟性にも影響しますよ。サラサラな血液の大切さは皆さん知っているとおりです。
糖尿病予備群の人にもMgは効果がありますか?
むしろ予備群とされる人のほうがMgのメリットが出やすい傾向があります。今から積極的に摂ってもらいたいですね。
どんなところから摂り入れるとよいでしょう?
昔のように毎日玄米などの全粒穀物と野菜を中心にしたバランスの良い食事をとるのがベストです。でも食生活を一気に変えるのは難しいですよね。なので、主食である穀物を変えることからおすすめしています。
食事の中で一番ウェイトを占めているからですね。
ええ。可食部100gで比べると、玄米ならMgを49mg摂れますが白米は7mgです。日本人の食事摂取基準(2010)のMg推奨摂取量が成人30~49歳男性370mg/日、女性290mg/日であることを考えると、毎食のこの差は大きいですよ。食事を減らす方法は栄養が偏り、Mg摂取が少なくなるので賛成できません。
日ごろ、患者さんにはどんなアドバイスをしていますか?
毎日少しずつなら食事に足していけそうです!
Mgは他の栄養素や働きを助けるミネラルでもあるんです。とくにカルシウムとMgは「馬と騎手」のような関係で、Mgがなければカルシウムは働けません。高マグネシウム症を心配する人がいますが、食品から取るMgで副作用が報告された例はありません。健康な細胞、血液、血管のためにもどんどんMgを含む食品を食べてより健康に長生きしていただきたいです。
今日はどうも本当にありがとうございました。マグネシウムの素晴らしさに感動してしまいました!これから毎日できるだけ多くのマグネシウムを摂っていきたいと思います。また、より多くの糖尿病患者・予備群の方が糖尿病とうまくつきあえるようにしたいと思います!貴重なお話、ありがとうございました!