あなたの周りに、たばこを吸う人はいますか?
平成27年の国民健康栄養調査によると、国民の8割以上は非喫煙者。喫煙率も年々低下しています。
喫煙による健康への悪影響が叫ばれて久しいですが、自分はたばこを吸わないからといって安心はできません。
非喫煙者が自らの意思とは無関係にたばこの煙にさらされ、喫煙させられている「受動喫煙」によっても、咳、喘息、鼻症状、眼症状、頭痛などのほか、肺がんの発症リスクや虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)の死亡リスクが増加することがわかっているからです。
パパママにとって、特に心配なのが子どもへの影響です。受動喫煙により、子どもの呼吸器疾患の罹患率、有病率の増加、呼吸機能の低下、発がんリスクの増加、身体発育への影響などが懸念されています。
また、妊婦さんが喫煙していると、喫煙以外の要因を調整しても、生まれてくる赤ちゃんは出生体重が小さくなりやすいというデータも。
国立がん研究センターは、受動喫煙を受けている人は受けていない人に比べて肺がん1.3倍、脳卒中1.3倍、虚血性心疾患1.2倍、乳幼児突然死症候群(SIDS)4.7倍の罹患リスクがあると発表(平成28年)。子どもや妊婦さんを含むすべての人を、受動喫煙から守る対策を早急に行うことが求められてきました。
平成15年5月施行の健康増進法第25条で、「(中略)多数の者が利用する施設を管理する者は、(中略)受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」との努力義務をもうけ、分煙など自主的な取り組みが推進されてきました。
一方で、国際社会の受動喫煙対策に注目すると、平成17年2月に発効され、日本も批准している「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」では、世界181か国の締結国(平成29年7月現在)に、屋内の公共の場所等における受動喫煙防止対策の実施を要求。
また、「WHOたばこ規制枠組条約第8条の実施のためのガイドライン」でも、屋内の職場と公共の場所について全面禁煙とすることを要求しています。
さらに、2020年に東京オリンピックを控える日本にとって無視できないのが、2010年のWHOとIOC(国際オリンピック委員会)による「たばこのないオリンピック」を推進することについての合意です。合意後、日本を除くすべてのオリンピック開催国・開催予定国が罰則を伴う法規制を実施。日本の対策の遅れが目立つ状況になっていました。
日本ではこれまで努力義務を設け、多くの人が利用する施設や飲食店等への自主的な取り組みを推進してきました。しかし調査により、多くの非喫煙者が飲食店や遊技場、職場などで受動喫煙の被害に遭っている状況が明らかに。努力義務による対策では不十分であることが明確になりました。
これらの状況を踏まえ、昨年(平成30年)健康増進法の一部が改正。「望まない受動喫煙」をなくすという観点から、飲食店も含め多数の人が利用する施設は原則屋内禁煙(喫煙専用室内のみ喫煙可)となりました(一部例外あり)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行されます。
法施行後の変更は次のとおりです。
厚生労働省より引用・作成
この対策により、「望まない受動喫煙」が生じることがなくなり、また喫煙者も意図しない受動喫煙をさせてしまうことがなくなるといった効果が期待されます。喫煙する人と受動喫煙を望まない人が、互いを思いやって生活できるようになるといいですね。