SNSにあふれるペットのかわいい写真やおもしろ動画は、見ているだけで癒されますよね。でも、実際にペットを飼うとなると、気をつけなければならないことも…。
ペットと人が互いに気持ちよく健康に暮らすためには、どんなことに注意したらいいのでしょうか。
ペットと生活するときにまず気をつけたいのが、感染症です。本来、犬や猫から感染症がうつることは少ないのですが、密接に触れ合うことによってまれに感染することがあります。
人の感染症はおよそ1500種類あると言われていますが、その半分以上が本来人以外の動物を宿主としている病原体と言われています。このような、本来は人以外の動物にいるはずの病原体が人に感染して病気を起こす感染症のことを「ズーノーシス(zoonosis)」と言い、日本語では「人畜共通感染症」あるいは「人獣共通感染症」と呼ばれます。ペットから人にうつるものもあれば、逆に人からペットにうつるものもあり、感染症の種類や感染経路はさまざまです。
「動物由来感染症ハンドブック2018」(厚生労働省)を加工して作成
予防のポイントは、ペットとの過剰な触れ合いを避けること。口移しでエサを与えたり、スプーンや箸の共用は止めましょう。また、ペットと同じ布団で寝ることも好ましくありません。感染症だけでなく、アレルゲン予防の観点からも寝室は分けることが得策です。他にも、フンやおしっこを乾燥する前に処理する、ブラッシングやつめ切りをこまめにする、室内の換気を心がけるなど、ペットと気持ちよく生活するための基本的な行動によって、感染症は予防することができます。
「ペットから人」だけではなく、「人からペット」への病気の感染にも気をつけなければなりません。
例えば、ペットのムシ歯の主な原因となるのは、人と同じミュータンス菌(ストレプトコッカス・ミュータンス Streptococcus mutans)と言われています。つまり、口移しでエサをあげたりキスをすることで、人からペットにムシ歯の原因菌をうつしてしまう可能性があるのです!大切なペットのためにも、私たちがきちんとオーラルケアをすることや過度のスキンシップを避けることが大切なんですね。
ここまで、ペットと人に共通する感染症をご紹介しましたが、もちろん動物との触れ合いにはストレス軽減などの良い効果もたくさんあります。スキンシップ自体が危険なのではなく、感染症の種類や感染経路など、正しい知識と適切な対処法を知っておくことが重要です。
近年世界的に拡がっている「One Health(ワンヘルス)」という言葉をご存知ですか?ワンヘルスとは、人の健康を守るため、動物や環境にも目を配ってひとつの健康を目指すという考え方です。例えば、上記のような感染症が問題となった場合、医師と獣医師が分野を超えて両側から対策に取り組む必要があります。このように医学・薬学・保健衛生学、獣医学、農学、理学、工学などの領域の研究者が集まり、連携して課題に取り組むことで、人、動物、環境の健康に貢献することが目的です。
日本では、2016年に厚生労働省主催のシンポジウムが初めて開催されたほか、2017年には「日本ワンヘルスサイエンス学会」が発足し、ワンヘルスの考え方を広く普及・啓発するとともに、分野間の連携を推進しています。
ペットと人が家族として一緒に気持ちよく健康に暮らせるように、正しい知識を身につけていきたいですね。