6月4日から10日までは、歯とお口の健康週間です。もともと、日本歯科医師会が、「6(む)」「4(し)」にちなんで6月4日を「むし歯予防デー」としていました。その後いろいろな呼び方がされましたが、今は6月4日からの1週間を「歯とお口の健康週間」として、歯と口の健康に対する正しい知識を普及啓発しています。さらに、自治体や行政と協力し、全国各地で独自にイベントなどが展開されているのです。
1年に1回の良い機会として、歯とお口の健康をしっかりと考えてみませんか。日頃のケアに加えて、歯科医院との上手なつきあい方も知りたいもの。歯科衛生士の平塚江玲奈さんに教えていただきました。
取材先プロフィール
歯とお口のためには、日頃のケアがとにかく大事!
丁寧に歯みがきをした方がよいとはいえ、食事のたびにブラッシングするのが難しい人もいるのでは。だからこそ、最低限でも自分に適したケアをしたいものです。
「最低限のケアは、人によって異なると思いますが、毎日のブラッシングは基本となりますので、1日1回は丁寧にみがく時間を作るように心がけましょう。3分から5分はかかるはずなので、時間はひとつの目安ですね。もっとも菌が繁殖するのは寝ている間なので、寝る前はしっかりと歯みがきをして、汚れを落とすと効果的です」
また、歯とお口のケアは、インフルエンザなどのウイルス性の病気の予防にもなるそう。
「日本歯科医師会からのお知らせによると、お口の中が不潔だと、そこに住む細菌がウイルスの感染を促進するそうです。特に、歯周病菌はその力が強いので、歯周病の方は細菌数を少なくするために歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目といった、歯周病菌が繁殖しやすい箇所の歯みがきをしっかりとしてください」
平塚さんご自身は、どのようなケアをしているのでしょうか?
「丁寧なブラッシングはもちろんですが、フロスで仕上げもしています。ウイルスの予防に効果があると聞いてから、週に2~3回だったフロスを毎日するようにしました。歯みがきの後には洗口液も使っています。むし歯予防や歯周病予防、着色予防などいろいろな種類があるので、自分の悩みに適したものを使うとよいと思います」
手洗い、うがいに加えて、丁寧な歯みがきや舌みがきが、歯とお口だけでなく、体の健康の助けにもなるのです。
少なくとも1年に1~2回はプロのケアを受けましょう
どれだけ丁寧にブラッシングしていてもハブラシが届きにくい場所にはみがき残しなどがあり、プラーク(歯垢)や汚れがたまってしまいます。定期的に歯科医院に行った方がいいとは聞くものの、どれくらいの頻度で行けばいいのでしょうか。
「平均的には、半年に1回程度だと思います。場合によっては、3ヶ月に1回通った方がいい方もいるので、かかりつけの歯科医院に相談してください。歯周病の方で歯ぐきと歯の間に深いポケットがあると、自分ではみがけません。そのため、しっかりケアする必要があります。炎症や出血がある場合は、こまめに通って悪化しないようにメンテナンスしましょう。歯科医院ではPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)という歯科医師や歯科衛生士などの専門家による特別な器具を使ったケアで、歯の表面のプラークや着色を除去し、スケーラーで歯石を除去します。歯の表面がつるつるして、数日間はプラークがつきづらくなりますよ」
歯の清掃のほかにも、歯科医院ではさまざまな相談に乗ってくれるそうです。
「歯石除去や歯の清掃と一緒に、新しくむし歯ができていないかチェックをしてもらうとよいと思います。それから、むし歯予防のためにフッ素を塗布することもできます。年に1~2回の塗布が一般的です。意外と知られていないのが、ブラッシングやお口のトレーニング指導。滑舌の悪い方などに、舌やお口の動きのトレーニングをアドバイスすることもできますよ」
「お口のことならなんでも相談してほしい」という平塚さん。歯だけでなく、喋り方や発声、食べ物が飲み込みづらいなどの悩みも相談に乗ってくれそうですね。
むし歯がなくても電話で気軽に予約を
長い期間、歯科医院に行っていない人はなかなかきっかけがつかめないもの。予約を取る時にはどのように伝えたらいいのでしょうか。
「『歯石取りと、むし歯や歯周病のチェックをしたい』と伝えていただければ大丈夫です。電話でいいづらい方は、Web予約のある歯科医院で、コメント欄などに書いてもいいですね。その後は、通院した時に次の予約をするのがおすすめです。半年後だとしても予約して、カレンダーに入れておけば忘れないので安心ですよ」
歯科医院へ行って歯石除去とむし歯チェック以外の相談をする時には、どんなタイミングでお願いすればいいのでしょうか。
「歯科医師は治療だけで、患者さんと対面する時間が短いこともあります。だからこそ、歯科衛生士を頼ってください。『ここが気になっているんです』『こんなこと相談できませんか』と気軽に聞いてほしいですね。受付の人は歯科衛生士でない場合もあるので、診察台でタイミングを見て聞いてみてはいかがでしょうか」
ちなみに、今の歯科医院があわない気がしたり、引っ越しをした時など、どのように歯科医院を選べばよいのでしょうか?
「第一に、ホームページでも、対面でも、説明が丁寧なところがよいと思います。
話しやすい雰囲気かどうか、負担なく通院できる距離か、予約希望時間に診察しているかもチェックしたいところ。長くおつきあいするためには、自分のライフスタイルにあうアポイント時間の長さや、診察時間帯で探しましょう。
また、歯科医師ごとに専門が異なるので、自分の悩みとあっているかをホームページなどでよく確認してみるとよいと思います。もし行ってみて気に入らなかったら、変えても大丈夫ですよ」
「歯医者さん」というと何となく怖いイメージがある方も少なくないかもしれません。でも、気軽に通えるようにしていくことで、歯とお口の健康が保たれ、結果的に体の健康にもつながっていきます。もっと歯科医院を身近にして、健やかに過ごしたいですね。
取材・記事 栃尾江美