「これって、知覚過敏かも?」と思うことはありますか?代表的な症状は冷たい物がしみることですが、ほかにも症状はいくつかあります。「どんな症状が知覚過敏なの?」「知覚過敏になったらどうすればいいの?」という基本的なことを、専門家に聞きました。
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知覚過敏は、むし歯とは違います。むし歯ではないけれど不快な症状が出るもので、以下のような場合は知覚過敏かもしれません。
・冷たい食べ物や飲み物がしみる
・熱い食べ物や飲み物がしみる
・甘い物やすっぱい物がしみる
・冷たい空気がしみる
・ブラシの毛先がしみる
冷たい物や熱い物など、特に急激な温度変化の時に「しみる」という感覚を覚えるのが特徴です。また、「しみる」症状は持続的なものではなく1分ほどで治まります。冷たい物でしみても、冷たさに慣れれば不快感は収まります。また、歯が全体的にしみるというより、特定の部分で起こります。
知覚過敏の痛みは、まさに「しみる」という感じ。「キーン」と感じたり、鋭い痛み、刺すような痛みと表現する人もいます。
まずは、違和感があったら、自分で判断せず歯科医院に相談するようにしましょう。過去に知覚過敏の経験がある方も多く、慣れてしまうこともあります。歯科医院では知覚過敏に対する処置もあり、症状を和らげるための治療を受けられます。また、知覚過敏ではなくむし歯が原因で症状が発生している可能性もあるので、違和感が出たら専門家に見てもらうことが大切です。
なぜ、歯がしみる知覚過敏になるのでしょうか。その仕組みは、歯の構造で説明できます。歯の断面図を見ると、外側に「エナメル質」、その内側に「象牙質」、さらに内側に「(歯髄)神経」があります。
歯の外側にある「エナメル質」が摩耗すると徐々に象牙質が露出してしまいます。エナメル質が薄くなると、象牙質にある「象牙細管」という無数の穴を通じて、外部からの刺激が「(歯髄)神経」に伝わり、しみてしまうのです。
その象牙細管で伝わりやすい刺激が、急激な温度変化や、あんこなどの甘い物、レモンなどの酸性の物、ハブラシの毛先による擦過刺激なのです。
ではなぜ、象牙質が露出してしまうのでしょうか。
●歯周病
歯肉で覆われている歯の根の部分には、エナメル質がありません。そのため、歯周病で歯肉が退縮すると、歯肉に覆われていた象牙質が露出してしまいます。そこで知覚過敏が起きやすいのです。
●強すぎる歯みがきや歯ぎしり
ブラッシング時に強くみがき続けたり、歯ぎしりなどで強い刺激を与え続けると、歯肉が退縮し象牙質が見えてしまうことがあります。また、歯ぎしりなどで歯がすり減ったり、欠けたり、亀裂が入ったりする場合も、象牙質がむき出しになり、そこで知覚過敏が起きやすくなります。
●すっぱい物の食べ過ぎ
酸性度の高い食べ物を習慣的に食べすぎると、エナメル質が溶けて象牙質が露出する場合があります。その症状を酸蝕症とも呼びます。
●加齢
年齢を重ねるにつれて、歯ぐきが痩せていってしまうため、歯肉の退縮が起こり、知覚過敏になることがあります。
知覚過敏だとわかったら、できるだけ不快な症状は和らげたいもの。どのようにケアをすればいいのでしょうか。
●やわらかいハブラシでやさしくみがく
歯ぐきが退縮している場合は、毛先の硬いハブラシを使うと退縮を進行させてしまう場合があります。そのため、やわらかいハブラシを使いやさしくみがきましょう。
●知覚過敏ケアのハミガキを使う
知覚過敏用のハミガキを継続して使いましょう。数か月から半年使うことで初めて効果を感じる人もいます。治まってきてからも、使い続けることで持続的な効果が期待できます。
適切なケアで知覚過敏が和らいだからといって、ケアグッズを使わなくなると再発の可能性もあります。継続的に使うのがおすすめです。
ケアだけでなく、食生活も気を付けたいところ。どんな食事に気を付ければいいのでしょうか。
●酸性の食べ物や飲み物
酸性度が強い食べ物、すっぱい物を習慣的に食べるのは避けたほうがいいでしょう。食べてはいけないというわけでなく、食べた後にお口をゆすいだり、お茶を飲むなどしてお口の中の酸性度を下げることが有効です。
●刺激物
冷たい物を食べたり飲んだりと、強く刺激されることが続くと、神経が死んでしまうことがあります。知覚過敏症状が出ている部位であえて冷たい物を噛んだりすることは避けましょう。
ケアの方法と食事のほかにも、症状をこれ以上進行させないためにできることはあるのでしょうか。
●正しい歯みがき
ハブラシの持ち方によっても力の入り方が変わります。また、歯並びは人によってそれぞれ。正しい歯みがきの方法をマスターすることは、知覚過敏の進行を抑えるのに有効な方法です。正しいブラッシング法は、歯科医院の歯科衛生士さんなどに教わるとよいでしょう。その際には、予約時に定期検診や治療のほか、正しいブラッシング方法を教えてほしい、といっておくとスムーズです。
症状に気が付いたら早めに歯科医院に相談することが大切。その上で、知覚過敏用のケアをしっかりとして、症状を和らげていきましょう。
取材・記事 栃尾江美