*ニューヨーク州立大学バッファロー校 歯学部 口腔生物学講座 教授 兼 UB マイクロバイオームセンター長
歯周病はどこか中高年、高齢者がなるもの…というイメージを持っていませんか?しかし、それはとんでもない間違い。平成28年の歯科疾患実態調査では、30代以上の約7割が歯周病という結果に。
そもそも歯周病とは、歯周プラーク(歯垢)の中の、歯周病菌がハグキに炎症を起こし、徐々に周りの組織を破壊していく細菌感染症です。この歯周病が進行することで、将来的に歯を失うリスクがある怖い感染症ですが、痛みなどの自覚症状がなく進行するため自分が歯周病だと自覚している人は全体の約3割(※1)にとどまっています。
しかも、歯周病は歯を失うリスクだけではなく、全身の疾患との関連も明らかになってきています。
例えば、メタボリックシンドロームの要因のひとつである肥満の方は脂肪細胞から次々と炎症物質が放出されています。それがハグキの炎症を引き起こし歯周病の発症や進行を促進するのではないかと考えられています。
また糖尿病の方は歯周病にかかっている割合が高く、重症化しやすいことがわかっています。そのほか、歯周病菌は、アルツハイマー、リウマチ、心疾患、骨粗鬆症、早産など、さまざまな全身疾患への関与が指摘されています。
さらに、近年では歯周病菌と大腸がんの関係について研究者から論文報告がされています。歯周病は、大腸がんをはじめ、全身の健康リスクを高めます。口腔内だけでなく、全身の健康を守るためにも、歯周病菌をしっかりケアすることが大切なのです。
※ Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム・ヌクレアタム)
歯周医学の進展により、歯周病は単に歯周病菌だけでなく、複数のお口の細菌との相互作用により発症することがわかってきました。
中でもフゾバクテリウム・ヌクレアタムという菌は、細菌同士をくっつける作用があり、歯周病菌の潜伏先(歯周プラーク)を作る上で悪い働きをする細菌です。
そして、この菌がいることで歯周病菌の増殖を促すことも知られています。
そのため、歯周病菌の増殖原因となるこの菌を減らすアプローチをすることで、歯周病菌が繁殖しにくいお口の環境を目指すことにつながるのです。
歯を失うだけにとどまらない、歯周病の怖さ。お口の健康だけではなく、大腸がんなど全身の健康に影響する可能性があることをしっかり理解して、日々の歯周病対策に取り組みましょう。
小さな丸い菌:P.g.菌 細長い菌:フゾバクテリウム・ヌクレアタム
フゾバクテリウム・ヌクレアタム(歯周病菌の増殖原因)の有無が、好気培養下(3日間、37℃)でのP.g.菌(歯周病菌)の増殖に与える影響を検証した(in vitro試験)。フゾバクテリウム・ヌクレアタムとP.g.菌を共に培養することで、P.g.菌の増殖が促進された。
※1 サンスター調べ(調査:2017年、対象者:20~70代の男女、回答者数:1800人)
取材・記事 クラブサンスター事務局
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