つい忘れてしまいがちな歯の定期検診ですが、お口の健康、ひいては全身の健康を守るために、とても大切です。
国と日本歯科医師会が導入をすすめている「国民皆歯科健診」制度でも、現在高校まで義務づけられている歯科健診(※)を、大人も年1回受診することが目標とされています。
ただ、実際に受診したくても、「どれくらいのペースで検診を受けるべき?」、「検診費用の目安はどれくらい?」といった疑問を持つことがあるでしょう。そこでこの記事では、歯科衛生士監修のもと、歯科検診にまつわる疑問をまとめて解消。あらためて知っておきたい、歯科検診のアレコレを解説します!
※この記事では、「歯科検診」と「歯科健診」を区別して記載しています。詳しくは後述の「Q.そもそも、歯科検診とは?どんな検査をするの?」の項目をご確認ください。
監修者プロフィール
そもそも、定期的に歯科検診に通っている人は、どれくらいいるのでしょうか。20歳以上の男女100人程度にアンケートをとった結果がこちらです。(2023年3月実施 WEBアンケート)
N=111名
調査期間:2023年3月
調査方法:インターネットリサーチによるWEBアンケート
回答者数:N=106
約55%の人が、定期検診に通っていると回答。逆に見れば、半数近くの人が定期検診を受けていないという結果になりました。
ちなみに、定期検診を受けていない理由を聞いたところ、上位に上がったのは「面倒だから」や「時間がない」でした。つまり、わかっているけど定期検診に行けていないということかもしれません。
また、27%の人が「歯に特に問題がなく、行く必要がないと思っているから」と回答しています。歯科検診は自分で気づいていない歯の病気を見つける役割もあります。いつの間にか病気が潜んでいる可能性も考えられるので、ぜひこの機会に歯科検診について知っておきましょう。
回答者数:N=48
一方、定期検診に行っていると回答した人に、その頻度を聞いたところ、3ヵ月から半年の間に一度、と答えた人がもっとも多い結果になりました。また、3ヶ月以内に一度と答えた人が、全体の約3割と、意外に多かったのも気になるところですね。
回答者数:N=58
「歯科検診では、どんな検査をするの?」「むし歯や歯周病の自覚症状がなくても、歯科検診を受けるべき?」など、歯科検診について抱いている疑問は多いはず。そこで、よくある疑問について、歯科衛生士がまとめて解説します。
Q.そもそも、歯科検診とは?どんな検査をするの?
まず、ご説明しておきたいのが、歯やお口の健康を調べるための検査には「歯科健診」と「歯科検診」の2種類があることです。
「歯科健診」とは、歯の健康状態を調べることを目的として行われる検査です。一般的に、歯科健診は学校や会社で行われているほか、自治体が乳幼児や一定年齢以上の方を対象に行っています。2022年10月からは、会社(事業者)が行う歯科健診が義務化されました。歯の健康状態を調べるための検査なので、検査以外にはむし歯や歯周病にならないためのアドバイスを行なう程度です。
一方「歯科検診」は、歯やお口の健康状態を調べるのに加え、むし歯や歯周病などの早期発見を目的に行う検査です。まず、歯周病になっていないかどうかを調べる歯周組織検査(プローブと呼ばれる器具などを使い歯周ポケットの状態を調べる)を行い、その上で必要があればレントゲンなど、細かな検査を行います。
つまり、「歯科健診」は歯が健康であるかのチェック、「歯科検診」はむし歯や歯周病などを早期発見するための検査といえます。
加えて歯科検診では、歯みがきでは落としきれない汚れや歯石(※)をクリーニングで除去するなど、むし歯や歯周病の予防につながる施術を行うのが一般的です。
今回の記事では、「歯科検診」をメインに説明していきます。
※歯石の除去は、歯科検診でスクリーニングを行った後、歯石沈着や歯茎から出血があり歯肉炎・歯周炎と診断がついた場合もしくは、歯科医師が必要と判断した場合に行ないます。
Q.歯科検診を受けるメリットは?
むし歯や歯周病の早期発見以外でいえば、歯石の除去など、ホームケアでは難しいケアを受けられることが、歯科検診のメリットといえます。
また、ホームケアをする上でも、歯科検診は大いに役立ちます。正しいみがき方を指導してもらえるほか、その人ごとにベターなハブラシやデンタルフロスなどのツール類、ハミガキペーストなどを教えてもらえたりするからです。
Q.歯科検診は、どれくらいのペースで通えばよい?
歯石の付きやすさなど、口腔内のコンディションは個人ごとに違うため、理想的なペースは人によって異なります。一般的に推奨されているのは、お口の状態が健康な方で半年から1年に一度のペースです。
ただし、お口の状態によってはそれよりも短いペースでの受診が必要になる場合もあります。
例えば、歯周治療処置を一通り終えた後、歯周ポケットの深さが規定(4mm)よりも深い状態の方であれば「SPT」と呼ばれる歯周病安定期治療を行なう場合もあります。このSPTは、3ヵ月に1回のペースが目安です。。歯石除去やクリーニングなど内容は似ていますが、詳しく言えばSPTは治療行為にあたりますので、むし歯や歯周病坊のためのメンテナンスを行う定期検診とは種類が異なります。
先ほどのアンケートで、3ヵ月に一度のペースで検診に通っているという人のなかには、SPTを受けている方が含まれているのかもしれません。
Q.特に問題を感じていない場合は、定期検診を受けなくてもOK?
歯科検診を受けるかどうかは、あくまでも個人の判断にゆだねられています。しかし、問題を感じていないからといって、検診を受けないと判断することは、歯科衛生士の立場からはおすすめできません。
たとえば、むし歯のレベルはC0~C4までの5段階があります。そのうち、C0やC1の段階では、あまり痛みを感じることがありません。つまり、問題がないと感じていても実際には、むし歯が進行している可能性があるのです。
これは、歯周病の場合も同様です。歯周病やむし歯の原因になる歯石ですが、1年間まったく歯石がつかないようにケアできる人は、かなり限られています。ちゃんとみがいているつもりでも、ホームケアには限界があります。その点でも、プロの手でケアしてもらえば、歯石をきちんと除去することができるので、口腔内のコンディションを良好な状態に保つことができるのです。
定期検診を受けることで、むし歯や歯周病を早期発見できれば、治療の回数も少なくなりますから、治療にかかる費用も節約できるかもしれません。また、むし歯や歯周病が深刻な状態になってしまうと、治療をしても元に戻すことが難しく歯を失ってしまう可能性もあります。
大切な歯やお口の健康が損なわれるリスクを考えれば、問題がないと感じていても、定期的に歯科検診を受けていただきたいですね。
Q.歯科検診の費用の目安は?
歯科検診にかかる費用は、検査や施術の内容によって幅があります。レントゲン検査をしないなら、保険が適用された場合、自己負担額は3,000円~4,000円の間くらいになる場合が多いと思います。レントゲン検査などが入ると、5,000円くらいになることもあるでしょう。ちなみに、レントゲン検査は、1年または2年に1度受けることをおすすめしています。
Q.歯科検診は、何歳から受けるべき?
何歳から受けるべき、という厳密な定義はありませんが、たとえば歯科”健”診は歯が生え始める時期にあわせて、1歳6ヶ月から行なわれます。
歯科検診も、だいたい同じくらいから受けたほうが良いといえるでしょう。奥歯が生えだすのが2歳くらいからなので、それを目安にしても良いと思います。ただしお子さんの場合でも、むし歯になりやすい人、なりにくい人がいますので、気になるのであれば、早めに検診を受け始めることをおすすめします。
Q.歯科検診のオプションとして受けられる施術はある?
歯科検診の主目的とは異なりますが、受診した際に着色除去やホワイトニングを希望する方もいます。これらの費用は、基本的に保険適用外なので、全額自己負担になります。着色除去で1万円から、ホワイトニングだと3万円からが費用の目安となります。
そもそもの役割から、その重要性まで、歯科検診についてご理解いただけたのではないでしょうか?
定期検診を受けていない方の理由として「面倒だから」や「時間がないから」が上位にあがっていましたが、むし歯や歯周病が進行してしまうと、何度も歯科医院に通わなければいけなくなるので、かえって面倒な思いをしたり、時間がかかったりすることになります。むしろ、面倒な思いをしたくなければ、定期検診を受けることをおすすめします。