もうすぐやってくる夏休み。そこで今回はお子さんも大人も楽しく学べる、自由研究のおすすめテーマ「動物と人間の歯の違い」について紹介します。
「人間みたいに歯の生えかわりってあるの?」「動物は歯みがきしなくても大丈夫なのかな?」など、気になる疑問を動物園の解説員さんに聞いてきました!
動物と人間の歯の違いを研究するにあたって、まず知っておきたいのは、私たち人間の歯のことです。
人間の場合、生後6~8ヶ月頃に「乳歯」と呼ばれる子どもの歯が生え始め、下の前歯から順に、2歳半~3歳頃に全部で20本の乳歯が生えそろいます。
そして小学校に入る6歳頃から少しずつ乳歯が抜け始め、「永久歯」と呼ばれる大人の歯へと生えかわります。永久歯は親知らずも含めると全部で32本。短い期間しか使われない乳歯と違って永久歯はとても丈夫です。
ただし人間の歯が生えかわるのは一回だけ。この永久歯がむし歯や怪我で抜けてしまっても新しい歯が生えてくることはありません。
6歳頃に生えてきた永久歯をその後何十年も使うのですから、改めて「歯を大切にしなくては!」と考えさせられますね。
私たち人間の歯についてはよくわかったけれど、そもそも動物と人間の歯はどこが違うのでしょうか?
今回は、上野動物園で開催された「歯と口の健康週間」のトークセッションに参加して、動物の歯にまつわる気になる疑問を、動物解説員の小泉祐里(こいずみ ゆり)さんに聞きました。
「ぱっと見ですぐわかる一番大きな違いは歯の形です。人間の歯は、哺乳類としてはどちらかというと原始的なほうで、オールマイティに色々なことができる歯の形をしています。一方、動物のなかには、草をすり潰す専門、硬いものをかじる専門、獲物を狩ること専門といったように、何かに特化した歯の使い方をするものも多く、それに適した歯の形に進化しています。」
確かに動物の歯は尖っていたりギザギザだったりと、人間とは違う形をしていますよね。では、動物の歯の生えかわりはどうなっているのでしょうか?
「人間も動物も哺乳類の仲間ですから、基本的には同じで、歯の生えかわりは一度だけ。ほとんどの動物は赤ちゃんのときに乳歯が生えて、それが抜けたら永久歯が生えてきます。
ただ、ちょっと違う生えかわり方をする動物もいます。それは動物園でもお馴染みのゾウ。
ゾウの奥歯は上下左右に1本ずつの計4本生えていて、とても大きく、葉っぱや木をすり潰すために、表面に細長い溝が並んだような形をしています。」
左 アジアゾウの牙/右 アジアゾウの奥歯
「そして、なんとゾウの奥歯は一生の間に5回も生えかわります。つまり、合計6本の歯が順番に出てくるというわけです。6本生えてくるうちの最初の3本が乳歯で、後の3本が永久歯ではないかと考えられています。
ゾウの寿命は大体50年~80年と、とても長生きをする動物です。長く生きるうちに歯がすり減ってなくなってしまうと困りますよね。そこで、1本ずつ順番に出していって長く使うというおもしろい工夫をしているのかもしれません。」
すり減ってなくならないように順番に1本ずつ歯が出てくるとは、なんとも効率的な生え方ですね!
食べ物を食べるために欠かせない大切な歯、守り続けなければなりませんよね。そこで気になるのがむし歯について。
果物や草木、肉や昆虫など、動物によって食べるものはさまざまですが、甘い果物を食べる動物がむし歯になることはあるのでしょうか?
「むし歯になることは少ないのではないかと思います。私たちが普段食べている果物はとっても甘いですが、実は人間が美味しく食べるために品種改良されたものであって、自然の果物はそんなに甘くないんです。ですから、果物を専門に食べている動物でもむし歯になることはそれほどないのではないでしょうか。
動物園でも甘い果物ではなく野菜などをあげることで、野生と同じように糖分を摂らせすぎない工夫をしています。そういったことも関係しているのかもしれませんが、むし歯になっている動物はあまり見かけません。」
おもしろいですね!そもそも自然の果物がむし歯になるほど甘くないとは驚きでした!
人間であれば歯医者さんが歯の治療やメンテナンスをしてくれますが、動物たちは自分で歯のケアをしているのでしょうか?
「野生で暮らしている動物たちは、むし歯になっても歯の病気になっても、当然誰かが治療してくれることはないので、ちゃんと自分で手入れをしています。例えば、世界最大のネズミの仲間、カピバラの歯を見てみましょう。」
「ネズミの仲間は、上の前歯が2本、下の前歯が2本、とても大きく突き出ています。前歯は根っこが骨の中に長く準備されていて、少しずつ伸びて出てくるようになっているのもおもしろいですよ。硬いものをかじって食べる動物なので、歯がすり減ってなくなってしまわないように、生えかわることなく一生伸び続けるのが特徴です。歯が伸び過ぎてしまわないように硬い木をかじったり、上下の歯を自分で擦り合わせて長さを調節したりと、自分で管理をしています。
また、アフリカにはカバなどの体についた虫を食べる鳥がいるのですが、そのような鳥が口の中に残った食べ残しも食べてくれるという例もあるようです。」
自分で歯の長さを調整したり、他の生き物に掃除をしてもらったりと、動物たちもそれぞれのやり方で歯のケアをしているんですね!
人間の場合は毎日の歯磨きが大切な歯のケアになります。自由研究を通して、改めて歯磨きの大切さをお子さんとお話しするのもよいですね。
ここからは、実際に夏休みの自由研究のテーマにするときにはどう調べたらいいのか、どんなところを観察すればいいのか、動物園でぜひ見てほしいポイントを聞きました。
「ぜひ牙を観察してみてください。奥歯はなかなか見えませんが、牙ならじっくり見ることができます。たとえばゾウの牙は、ライオンやトラの牙と違って、犬歯ではなく前歯が伸びたもの。長く伸びると2mほどになることもあるんですよ。アジアゾウの場合、牙が伸びるのはオスだけですが、アフリカゾウはオスもメスも牙が伸びるという違いがあります。
例えば、上野動物園には現在、アジアゾウのオスの子どもがいます。まだ少ししか牙が出ていないですが、これからどんどん伸びていくので、その成長の様子を観察してみるのもおもしろいですよ。
ちなみにゾウやカバの牙は、オス同士が戦ってメスを取り合うためのもの。サルの仲間では、大きく口を開けて相手に牙を見せつけて、自分の強さをアピールするといった使い方をするものもいます。
動物によっていろんな歯の形があり、いろんな使い方をするので、ぜひそういったポイントにも注目してみてくださいね。」
いかがでしたか?
歯の形から生えかわりの回数、むし歯のなりにくさまで、動物の歯と人間の歯にはさまざまな違いがあることがわかりました。最後に、今回学んだおもしろい違いを、自由研究としてまとめて完成です!ぜひ参考にしてみてくださいね。
★まとめ方