こんにちは。サンスター研究員の関根です。
研究員が教える豆知識 第13弾の今回は、「かんで食べる」について、ご紹介します。
私たちは、普段、食べ物を「口に入れて、かんで飲み込む」ことで、体内に取り入れて栄養を取っています。
1日3回の食事や、間食などで、毎日欠かさず行っている「食べる」という作業、普段は無意識に行っていて、当たり前の行動だと感じてしまいますが、実はとても複雑で大切な作業なのです!
まず、「食べる」時に、口の中で何が起こっているのか、簡単に説明します。
食べ物が口の中に入ると、前歯でかみ切り、口を閉じます。
次に舌や上あごで味や硬さなどの性質を調べ、口の中にあるものが“食べられる”ものかどうかを判断します。“食べられる”と判断できると、硬いものは奥歯(臼歯)ですりつぶし、柔らかいものは上あごと舌を使って押しつぶして、小さくしながら、だ液と混ぜ合わせて飲み込みやすい塊(食塊)を作ります。
食塊となった食べ物は、咽頭を通り食道に送られますが、この時もむせないように、筋肉が上手に動いて気管にフタをして、食塊を食道に導いているのです。
こんな複雑な作業を、私達は1回の食事で600回以上も、無意識に行っているのです!
国の調査(厚生労働省:平成27年国民健康栄養調査)によると、「何でもかんで食べることができる」人の割合は、40代では9割以上ですが、歳を重ねるにつれてその割合は減少し、70歳以上になると6割にまで減ってしまっています。
かんで食べられない人が増えるのはなぜでしょう?
その原因の一つとして、「歯」を失ってしまうことが挙げられます。
別の調査では、40代で1人平均28本あった歯は、50代で27本、60代で24本、70代で21本にまで減っています(厚生労働省:平成28年歯科疾患実態調査)。特に、食べ物をすりつぶすなど、重要な役割を果たす奥歯(臼歯)を失い、かみ合わせができなくなってしまうと、食べ物を十分に細かくすることが難しくなり、「かんで食べにくい」と感じてしまうようになるのです。
「かんで食べにくい」と感じるようになると、肉類や野菜、果物といった、“食べごたえのある”固いものや繊維質な食品を避けてしまいがちになってしまいます。肉類は体の筋肉の原料となる食材であり、メタボ(メタボリックシンドローム)やロコモ(運動器症候群)を予防するためには欠かせません。また、野菜・果物は、ビタミンなどの栄養価が高いだけでなく、食物繊維も豊富な食材です。これらの“食べごたえのある”食材も、しっかりかんで食べられるようにしておきたいですね。
さらに、かんで食べにくくなると、「かまなくても食べやすい食品」を食べすぎてしまう傾向もあります。「かまなくても食べやすい食品」の代表は、ご飯などの炭水化物。特に血糖コントロールを意識されている方は、炭水化物を取りすぎには気をつけたいところです。
食べ物を食べる際に、忘れてはならないもの、それは「おいしさ」を感じることです。
食べ物の「おいしさ」とは、「味」や「におい」、「見た目」に加えて、「食感」も重要な要素です。この「食感」は、歯と歯を支える骨の間にある、「歯根膜」と呼ばれる“食感センサー”が刺激を受けることによって、感知しているのですが、歯が抜けてしまうと一緒に失ってしまうのです。失ってしまった歯は、入れ歯やインプラントで補うことはできますが、この“食感センサー”は取り戻すことはできません。よりおいしく食べるためにも、なるべくたくさんの自分の歯を維持したいですね!
最初に失ってしまうことが多い歯は、むし歯や歯周病になりやすい奥歯(臼歯)です。臼歯は全部で16本ありますので、「1本ぐらい失っても大丈夫かな」と思ってしまうかもしれませんが、1本の歯を失ってしまうと、その周囲の歯は、かみ合わせの力が弱まるため、ドミノ倒しのように連鎖的に抜けていく傾向に。臼歯を何本も失ってしまうと「かんで食べる」ことが次第に難しくなってしまいますので、1本1本の歯を大切にしなくてはなりません。
歯を失ってしまう主な原因である、むし歯や歯周病を予防する方法は・・・、
そう、「しっかりとしたオーラルケア」ですね!
こちらの連載で紹介した、洗口液や歯間ブラシを上手に使ったり、歯科医院に定期的に通ったりすることで、「おいしく食べられる」お口を守れるように、これからもオーラルケアに取り組んでくださいね!