今回は、これまでにも紹介したことがある「DASHダイエット」について、こんな記事をご紹介いたします。
みなさんは「DASHダイエット」をご存じですか?
「DASH」とは、「高血圧を防ぐ食事方法」(Dietary Approaches to Stop Hypertension)の頭文字を取ったものであり、「ダイエット」といっても、体重を減らすことではなく、食事療法のことです。
この「DASHダイエット」は、高血圧の予防・改善を目的に考案されたものですが、これまでにDASHダイエットは高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症にも効果的な食事法であることが研究によって示されていました。
さらに、最近「DASHダイエット」には高血圧の予防と改善だけでなく、血中尿酸値の低下・痛風の予防に効果的であることが米国のハーバード大学マサチューセッツ総合病院の研究により、明らかになりました。
「痛風」は、血液中の尿酸(細胞の老廃物)が多くなる「高尿酸血症」が続くことで、結晶化した尿酸が関節内にたまり、激しい関節炎が起こる病気です。尿酸値が高い状態が続くと、腎臓病や尿路結石なども発症しやすくなります。
昔は一部の富裕層の病気といわれていましたが、近年では若い患者や、女性患者の増加傾向がみられます。特に女性は閉経後、女性ホルモン減少の影響で尿酸値が上昇しやすい傾向にあります。
痛風の原因である尿酸は、体の仕組みが正常に働いていれば、一定量に保たれています。しかし、何らかの理由で過剰につくられたり、排出される量が減ると、血液中の尿酸量が増え、濃度が高くなります。
尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断され、治療を開始しなければなりません。しかし、高尿酸血症と診断されても、すぐに痛風発作が起こるわけではないので、注意が必要です。
「治療が必要と診断されたけれど、痛風の症状は無いから大丈夫だろう」と、そのまま高尿酸血症を放置していると、症状がない間にも尿酸は結晶化し、徐々に体内に蓄積されていきます。そして、体内に溜まった結晶化した尿酸は、痛風以外にも身体に様々な悪影響を及ぼします。「症状が出ていなくとも非常にリスクの高い状態」だということを、理解しておく必要があります。
自覚のないうちに病が進行しているのはとても恐ろしいですよね。健康に過ごすためにも、日頃から痛風に気をつける必要があります。
では、DASHダイエットの痛風予防の効果はどれほどのものなのでしょうか?
米国とカナダの研究者チームは、痛風を発症していない40~75歳の男性約4万5000人を対象に26年にわたって4年おきに食事アンケートを実施。DASHダイエットと西洋型ダイエットの遵守度/実施度をスコア化し、痛風リスクとの関連性を調査しました。
DASHダイエットの特徴は、果物・野菜・ナッツ類・豆類・低脂肪の乳製品・全粒穀物の摂取量が多く、塩分・高カロリーの飲料・赤身肉・加工肉の摂取量が少ないこと。
西洋型ダイエットの特徴は、赤肉・加工肉・フライドポテト・精製穀物・菓子・デザート類の摂取量が多いことです。
1,731例が痛風を発症。DASHダイエットと西洋型ダイエットのスコアを解析した結果、以下のことがわかりました。
・DASHダイエットの遵守度が最も高かったグループは、最も低かったグループに対して、痛風の発症リスクが32%低下
・一方、西洋型ダイエットの実施度が最も高かったグループは、最も低かったグループに比べ、痛風の発症リスクが42%上昇
研究者は「今回行ったのは観察研究であり、確固たる因果関係を示すものでない」としながらも、「DASHダイエットには痛風のリスクを低下させる魅力的な食事である可能性がある」と述べています。
痛風の人は高血圧を併せもつことが多いですが、「DASHダイエット」は痛風と高血圧の両方を予防することができます。つまり、一石二鳥の効果が見込めるというわけですね。
そんなDASHダイエットですが、毎日の食事に気を配れば、誰でもすぐに実行できます。
■塩分を控える
食塩のとりすぎは血圧を上げる重大な要因であり、塩分の摂取量が少ない人には高血圧が少ないことが明らかになっています。塩分を減らすためには、「酸味」「香辛料」「香味野菜」「だしのうまみ」を使い、味付けを工夫すると効果的です。
■食物油で不飽和脂肪酸をとる
多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む植物油を十分に摂取すると、血圧が低下するという調査結果があります。大豆油やグレープシードオイル、コーン油などに含まれるリノール酸、アマニ油やクルミなどに含まれるリノレン酸、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表的な多価不飽和脂肪酸です。
また、オリーブオイルやキャノーラ油(菜種油)には一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸が多く含まれており、脳卒中や心筋梗塞などの発症を減らすという報告があります。
■野菜を毎日、十分に食べる
「食物繊維を積極的にとる」ことも大切です。野菜、きのこ、海藻、玄米などに多く含まれる食物繊維は、小腸でのコレステロール吸収や食後高血糖を抑えるため、高血圧の人だけでなく、糖尿病や血糖値が高めの人にも適しています。
また、野菜にはビタミンやミネラルも豊富に含まれており、特にカルシウム、カリウム、マグネシウム、ビタミンKなどの栄養成分は高血圧の予防・改善に役立ちます。
■低脂肪乳を選ぶ
牛乳には良質なタンパク質やカルシウムなどが含まれます。カルシウムは骨を強くするだけでなく、血圧調整の役にも立ちます。脂肪分が気になる場合には、無脂肪乳や低脂肪乳などを選ぶと良いですね。
■玄米や全粒粉を食べる
玄米や全粒粉など精製度の低い穀物は、普通のパンやご飯よりも食物繊維が豊富に含まれています。こうした穀物を主食に混ぜて食べると、無理なく食物繊維の摂取量を増やせます。また、腹持ちが良いので、食べ過ぎを防ぐ効果も得られます。
■糖質を控える
糖質(炭水化物)を多く含む食品は、食後の血糖値を急激に上昇させます。菓子類や菓子パンには脂質も糖質も多く含まれていて高カロリーのため、なるべく控えましょう。代わりに、主食を全粒粉のパンにし、低脂肪乳を加えればカルシウムも補えます。
■ナッツ類を食べる
アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなどのナッツは、健康的な食品として注目されています。最近の研究で、ナッツが心筋梗塞などの心疾患やメタボリックシンドロームの改善に役立ち、がんを予防する効果もあることが分かりました。
また、ナッツ類に含まれる抗酸化作用をもつ栄養素やフィトケミカルが、悪玉のLDLコレステロールを低下させ、善玉と悪玉のコレステロールのバランスを改善すると考えられています。
以上、DASHダイエットについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
高血圧の予防・尿酸値の減少が期待できるDASHダイエットは「毎日の食事に気をつける」なので、今日からでも取り入れられそうですよね。
更に、米国のメイヨークリニックやミシガン大学によって、DASHダイエットが脳卒中・心筋梗塞などの発症率低下にも効果があることが明らかになっています。DASHダイエットは糖尿病や脂質異常症の人にとっても、効果的な食事法ですので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
以上、たまきでした。
※引用元:糖尿病ネットワーク
高血圧予防ダイエットは痛風にも効果がある 高血圧と痛風の両方を改善 - 2017年06月02日
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2017/026940.php
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