胃・大腸・呼吸器などの手術を受ける場合のお口の管理（口の近くに傷ができない）～がん治療中の方へ～

がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。

全身麻酔で手術を受ける時には手術前に歯科を受診することがすすめられます。全身麻酔時の挿管で唇が傷つく、歯がかける、歯が抜ける、歯の被せ物が取れる、口が乾くなどの口のトラブルを予防するためです。胃・大腸・肺の手術後に食べたり飲んだりする動きが難しくなることは少ないですが、手術後の傷に痛みがあると咳を出しづらくなります。通常、唾液や食べ物、飲み物が気管の方に流れ込みそうになると咳が出て、流れ込みそうになった物を咳と一緒に出すことができます。咳を出しにくい時や咳が弱い時は、流れ込みそうになった物を十分に出すことができません。口の中の汚れが唾液などと一緒に気管に流れ込むと肺炎を起こしやすくなり、時に重篤化します。これを予防するため、手術前には歯科を受診して治療が必要な歯のチェックと専門的な口腔内の清掃（プロケア）をしてもらいましょう。さらに、セルフケアで口をきれいに保ち、手術後もきれいにしておくことが大切です。

①胃の手術を受ける場合

手術の前に歯科を受診してプロケアを受けましょう。また手術の後の食事に困らないようにするための歯科治療を受けましょう。胃の手術では、合併症として傷口の感染と縫合不全（手術の時に縫いあわせたところがうまくつながらないこと）などが起こることがあります。手術の後、口から流れてくる唾液に細菌が多く含まれると傷口が感染しやすくなり、縫合不全を起こした場合は治りに影響することがあります。手術の後の歯みがきやうがいを継続しましょう。また、手術の後の食事への配慮も必要です。食事はゆっくりよく噛み、胃に負担をかけないようにする必要があります。歯科治療を受けておき、入れ歯がない・あわない、むし歯や歯周炎で痛い、などの理由で食べ物がよく噛めないということがないようにしましょう。手術の前に歯の治療がすべて終わらなくても、手術の後に計画的に歯科受診をすることで、食事での困りごとを減らすことができます。

②大腸の手術を受ける場合

手術の前に歯科を受診してプロケアを受けましょう。大腸の手術の後は、腸に食べ物や便が詰まりやすくなることがあるため食事への配慮が必要です。食事はゆっくりよく噛み、大腸に負担をかけないようにする必要があります。入れ歯がない・あわない、むし歯や歯周炎で痛い、などの状態を放っておかないようにしましょう。手術の前に歯の治療がすべて終わらなくても、手術の後に計画的に歯科受診をする治療を受けておくことで、食事での困りごとを減らすことができます。

③肺の手術を受ける場合

手術の前に歯科を受診してプロケアを受けましょう。肺の手術の後は、痰が多く出ることがあります。痰詰まりから、無気肺（肺に空気が入らない）状態、さらに無気肺から肺炎を起こすことがあります。手術の前に歯や口をきれいにしておくことで、手術の後の肺炎リスクを減らすことができます。また、反回神経（発声や嚥下の時に声帯を動かす神経）が含まれ影響を受ける手術では、唾液や食べ物や飲み物が誤って気管へ入る「誤嚥」が起こりやすくなります。口の清潔を保ち、飲み込みのリハビリテーションを受けましょう。