がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。
近年のがん治療の3本柱は、「手術療法」、「放射線療法」、「抗がん剤治療」です。
最近では、それに加えて免疫の再活性化やがんゲノム医療など、治療の選択肢が増えてきました。主な治療法である手術療法でも、カラダにできる傷を少しでも小さくするような小型のカメラを使った方法(胸腔鏡や腹腔鏡)やロボットを使用した手術などについて聞く機会も増えましたが、やはり直接医師の目で確認しながら行われる手術等、がんの部位や大きさにあわせた方法で行われることが多いのが現状です。
では、がんの手術が終わった後はどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
日本麻酔科学会のガイドラインでは、大人では手術前8時間、子どもでも手術前6時間からは食事の禁止、手術前2時間までは清澄水(水、お茶、果汁を含まないジュース等など)飲用可などが提唱されています。
(内容や時間に関しては、手術部位や病院によって定めが異なりますので、かかりつけの病院で確認してください)
これは、手術中に胃の内容物が肺に入ってしまうことで発症する肺炎を予防するためです。また全身麻酔などの場合は、眠っている状態で気管に管を入れたりすることがあり、術後に目が覚めた時にはのどに痛みがあったり、違和感があることがあります。手術前の絶飲食は、口の中やのどにも影響をするのです。
術後は、麻酔導入薬の副作用や酸素吸入、絶飲食などのため、口の中が乾燥してしまいます。
本来、口の中は唾液で湿潤している状態が理想であり、唾液の自浄作用(口の中を洗い流すはたらき)が機能していますが、乾燥によってそのはたらきが低下してしまいます。管を入れた時の刺激や乾燥で粘膜が弱っていることも考えられます。この時、口の中が清潔に保たれていないと乾燥によって口の中の細菌がさらに繁殖します。歯垢1グラムの中に、細菌は1,000億個あるといわれていますが、口腔内乾燥によりさらに菌数が増え、手術後の抵抗力が落ちているカラダに影響を及ぼすこともあります。それは、気管に入れた管を伝って口の中で増えてしまった細菌が肺に入りこんでしまい、肺炎になってしまうことや、部位によっては術後の傷が感染を起こしてしまうことなどです。
手術後の口腔内の細菌によるカラダへの影響を考えると、手術前に歯垢や歯石を取り、口の中の細菌数を減らすことが非常に重要です。また、日常のブラッシングや口腔ケア、乾燥ケアが重要になってきます。よく患者さんからは「お腹の手術なのに、なぜ歯医者に行くのですか?」と聞かれることがあります。その都度、患者さんに説明をさせていただき、納得をしてもらってから術前の歯科受診をご案内しています。
手術後はベッド上安静になってしまい、一時的ではありますが、自分自身のことを看護師に頼まなくてはならなくなります。口の中が乾燥して不快感があっても、看護師に遠慮をしたり、うがいや口腔ケアを希望していても、それを伝えられない患者さんがいらっしゃいます。手術する部位によってはうがいをすることも可能で、看護師もなるべく患者さんが安楽に過ごせるように支援をしたいと考えています。もしも辛い状態があるならば、遠慮することなく、しっかり伝えて下さい。看護師は、いつでも患者さんが安心、安全、安楽に過ごせるようにお手伝いをいたします。
<参考文献>
日本麻酔科学会術前絶飲食ガイドライン(最終アクセス4月28日)
厚生労働省生活習慣病予防のための情報提供サイトeヘルスネット「プラーク/歯垢」(最終アクセス4月28日)
夏目長門,池上由美子:治療を支えるがん患者の口腔ケア,医学書院,2017
国立がん研究センターがん情報サービス:「手術(外科治療をもっと詳しく知りたい方へ)」(最終アクセス4月28日)
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