骨修飾薬が使用される時の注意点～がん治療中の方へ～

がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。

骨修飾薬という種類の薬をご存知でしょうか？言葉だけを見ると骨を飾り付けるようなイメージがあります。
普段、患者さんと話していて、「骨の薬とは聞いています」という患者さんが多いのですが、骨修飾薬はどのようなものか、あまり知らないまま使用している方が多いような印象があります。
骨修飾薬について、がん患者さんの場合は骨転移がある方がほとんどですが、骨粗鬆症の治療薬でもありますので、自分がなぜこの薬を使用するのかを、しっかりと主治医に確認をして下さい。

骨転移について知ってほしい

まず、骨転移についてご説明します。
骨転移はがんの種類によって発生頻度に差があり、特に血流が豊富な部位でみられやすく、乳がんや前立腺がん、肺がんや腎がんなどで多い傾向にあります。
一概に、骨転移といっても溶骨性や造骨性、混合性などの分類にわかれており、乳がんや肺がんでは溶骨性が多く、前立腺がんでは造骨性が多くなっています。造骨性は骨が強くなると思われがちですが、がん細胞はこの弱みに付け込んで、がん細胞が増殖するための土壌としてしまうのです。乳がんや前立腺がんを約20年前に患っていて完治していたと思っていても、急に腰痛がみられて足がしびれてきたなどの症状がある時は要注意です。がんが完治したと思っていても、見えない種のようながんが骨転移を引き起こしてしまう可能性もあります。
万が一これまで乳がんや前立腺がんに罹ったことがある患者さんに、足のしびれや緩和しない腰痛などの症状がみられたら、すぐに対処が必要な場合があるため、主治医の診察を受けてみてください。

骨修飾薬の効果と副作用

骨転移はまず発見をすることが大切です。治療としては手術療法もありますが、放射線治療に併せて骨修飾薬を使用することで効果があるといわれています。しかし、骨修飾薬を使用するにあたり、十分気を付けなければならないことがあります。
副作用として、顎骨壊死という重大な症状があります。これは、口の中から顎まで穴が開いてしまったり骨が露出してしまう症状で、一度生じると痛みを伴ったり、食事の摂取が難しく低栄養状態になってしまうなどの問題があります。
なぜ副作用で顎骨壊死になってしまうのか、いくつかの原因は報告されていますが、まだ明確にはなっていません。
しかし、はっきりとわかっていることは、口腔内の細菌を減らすことで回避できる可能性が高いということです。
必要なのは、しっかりとしたプラークコントロールを行うために、骨修飾薬の投与前に専門的な歯科処置を受けることです。

毎日のケアと観察の重要性

骨修飾薬を使用している期間は、赤みを伴う腫れや顎の痛み、違和感などの初期症状をしっかりと自覚して発見することが必要です。そのためにも、毎日の歯のブラッシングの際に、口腔内の観察を丁寧に行ってください。口の中は暗くて見えないことがあります。しかし、骨修飾薬の副作用である顎骨壊死は下顎の骨に起こることが多いです。口を開けて、しっかりと舌を動かしながら下の歯の歯ぐきを十分に確認し、日々のブラッシングや歯間の清掃を充実させましょう。
また、専門的に口の中を見てもらうためにも定期的な歯科健診をお勧めします。

＜参考文献＞
日本口腔ケ外科学会他「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理：顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016」（最終アクセス5月6日）
上野尚雄他：がん患者の口腔マネージメントテキスト,文光堂,2016
日本臨床腫瘍学会：骨転移診療ガイドライン,南江堂,2015