子どものころ、「よく噛んで食べなさい」「ひとくち30回以上噛みなさい」などと教えられた経験がある人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、忙しくて食事時間が短かったり、テレビやスマホを見ながら食事をしていると、よく噛んで食べることが疎かになりがちです。
よく噛んで食べることは、お口や歯、筋肉や脳に至るまで、さまざまな効用があることがわかっています。また、高齢者の健康維持にも大きな役割を果たします。改めて噛むことの効用を知って、「よく噛む」ことを意識して毎日の食事をしてみましょう。
「よく噛む」ことには、次の8個を代表とする効用があります。
①味覚の発達
よく噛んで味わうことで、食べ物本来の味がわかるようになります。
②消化促進
食べ物が小さく噛み砕かれることで、お口の中や胃、腸の中での消化を助けます。
③唾液分泌
唾液腺を刺激し、唾液の分泌をよくします。唾液にはお口の中をきれいにする働きがあり、むし歯や歯周病予防につながります。
④異物を排出
体内に有害な異物が入らないように食材の中の異物を発見し、排出します。
⑤生活習慣病予防
ゆっくり噛んで食べることで満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防止。肥満予防、生活習慣病予防につながります。
⑥言葉の発音を助ける
顔の筋肉や骨(顎)を使うことで表情が豊かになるとともに、口をしっかり開けてはっきり発音できるようになります。
⑦姿勢保持
顎位(上顎と下顎の位置関係)の保持につながり、姿勢を正しく保ちます。
⑧脳の活性化
口を動かして噛むことで脳の血液の流れが良くなり、脳細胞の働きを活性化します。
「よく噛むこと」は健康維持に欠かせませんが、そのためには「健康な歯」をキープすることが大切です。むし歯や歯周病で歯を失ってしまうと、噛む力が弱くなり、しっかり噛んで食べることができなくなってしまいます。
歯や口の働きの軽微な機能低下「オーラルフレイル」を放置すると、噛む力が衰えて柔らかいものしか食べられなくなり、栄養バランスが乱れたり低栄養に陥ることも。こうして学習、記憶、自立度、認知、全身的な運動の持久力などが低下していってしまう可能性もあります。そして、実はオーラルフレイルは40代から予防したほうがいいとも言われています。
よく噛んで食べられる健康な歯を維持するために、まずはお口の中を清潔に保ちむし歯や歯周病を予防すること、そしてお口の機能低下を見逃さずにオーラルフレイル対策をすることが大切です。
また、小さな頃からよく噛んで食べる習慣を身につけることは、将来の健康長寿にもつながります。お子さんやお孫さんにも「噛む」ことの大切さを教えてあげたいですね。