顔の形がそれぞれ違うように、歯の形も違います。自分以外の口の中は目にする機会がないので、知らないケースが多いかも。よく見ると、お子さんの歯が変わった形をしていて驚くこともあるかもしれません。
ちょっと変わった歯の形とともに、注意すべきことを併せてお伝えします。
監修者プロフィール
変わった歯の形の前に、まずは私たちの歯の基本について紹介します。歯の役割や本数を改めて知っておきましょう。
前歯 1~2番目
一番前に生えているのが前歯で、上下4本ずつ、計8本を指します。ご存じの通り、食べ物を噛み切ったりする役割があります。
「中切歯(ちゅうせっし)」が一番前の歯で、「側切歯(そくせっし)」が2番目の歯になります。
犬歯 3番目
糸切り歯とも呼ばれます。先がとがっており、大きな肉に切れ目を入れて切り裂いたりする役割。
臼歯(きゅうし) 4~8番目
以降はすべて「すりつぶす」役割です。2本が「小臼歯」、次の2本が「大臼歯」です。食べ物をすりつぶして飲み込めるように、平たい臼状になっています。
臼歯の中で一番奥の8番目を「親知らず」と呼ぶこともあります。もともと存在しなかったり、存在しても生えてこない人も多くいるのは、ご存じの方も多いことでしょう。
変わった歯の形には、いろいろな名称が付いています。いくつか代表的なものと、ケアの仕方や注意点を教えていただきました。
カラベリー結節
臼歯の内側に余分なでっぱりができている形です。そのため、でっぱりとの間に溝ができ、その部分がむし歯になりやすいので、溝を意識してみがくことが大切です。それほど珍しいわけではなく、お手入れは基本的なブラッシングで問題ありません。定期的に歯科医院でチェックしてもらえばなお安心でしょう。
中心結節(中央結節)
臼歯の真ん中に突起があるケースです。実は突起の中に神経が入り込んでいるので、硬いものを噛むなど何かの拍子に折れると神経が出て激痛が生じることがあります。そこから感染すると神経をとらないといけなくなります。普段は違和感がないため、気が付かないことが多いようです。永久歯が形成される段階でわかりますので、生える前にレントゲン写真でわかることもあります。特に生え変わりの時期には定期的に歯科でチェックを受けるのが良いでしょう。
歯の癒合
隣同士の2本の歯がくっついて生えてくる状態です。乳歯の前歯で多く発生しますが、永久歯に生じることもあります。歯がむし歯などになって抜かなくてはならない場合、2本とも抜けるのがリスクといえます。隙間があるわけではなく全部くっついているので、歯みがきが難しいということもありません。特に不都合があるわけではなく、普通の歯と同様に丁寧にブラッシングをしましょう。見た目などで気になるようなら歯科医に相談してください。
エナメル滴
外からはわかりませんが、歯ぐきの中に埋まっている骨の部分に、ご飯粒のようにエナメルの塊ができることがあります。エナメル質には歯ぐきがくっつくことができないので、歯周病になった時など歯ぐきに歯周ポケットができると、ばい菌が入り歯周病が進みやすくなります。通常は見た目ではわかりませんが、レントゲンや歯周ポケットの部分を触って判明することがあります。
矮小歯
通常より小さい歯をこう呼びます。側切歯や親知らずに多く現れます。小さいだけなので特に支障はありません。
歯の形が違っても、基本的には通常通り丁寧にブラッシングすることが大切です。もともと、歯の形は深い溝や凹凸がつきものだからです。
どうしてもみがきづらい箇所は、1本の束になっているタフトブラシ(ポイントケアブラシ)を使いましょう。小さくくるくると回すようにみがくのがコツです。
今回紹介した以外にも、変わった形の歯はたくさんあります。基本的には問題ない場合がほとんどなので、個性だと捉えてよいでしょう。むし歯にならないよう、意識して丁寧にみがくようにしましょう。
ただ、時に中心結節のように注意しなくてはならない形もあるので、心配なら歯科医に相談してくださいね。
取材・記事 栃尾江美
イラスト 中川原透