近頃話題になっている「オーラルフレイル」。これは「オーラル=口腔」と「フレイル=虚弱」を組み合わせた言葉で、お口の機能の低下を表しています。具体的には「食事を食べこぼす」「お茶や汁物でむせる」「硬いものが食べづらい」「滑舌が悪くなる」といったささいなお口の衰えのことです。このオーラルフレイル、実は40代半ばから徐々にはじまっているということをご存じでしたか?
例えば、当たり前にできている「食べる」機能や「話す」機能が衰えたら、カラダの健康だけでなく、日常の楽しみが大きく損なわれてしまいますよね。お口の健康はカラダや心の健康にも深く関わっており、早くから気を付けていれば、将来の健康維持にとても効果的なのです。
また、健康寿命を長く保つためには、「歯周病やむし歯で歯を失わないこと」や「お口の機能を維持すること」がとても大切。歯周病やむし歯を防ぐためにはいろいろなケアが思い浮かびますが、特にお口の機能を維持するためにはどうすればいいのでしょうか?サンスターオーラルケアマーケティング部メンバーに取材しました。
お口の機能には、大きく分けて以下の4つがあります。
・食べる
・飲み込む
・話す
・唾液分泌
食べるためには、口を開けて食べ物を口に入れ、歯でよく咀嚼し、飲み込む、といった一連の流れがあります。そのためには唾液が必要になるため、唾液の分泌も大切なお口の機能なのです。
唾液には抗菌成分があり、お口の中を洗い流す効果もあります。また、お口の中が乾くと話しにくいため、「話す」ためにも大切です。
食べるためのお口の機能について詳しくはこちらの動画もご覧ください。
現代人は、昔の人に比べて1回の食事で噛む回数がかなり少なくなっています。あごの骨格が細くなり、筋肉が衰えているというのはよく聞く話ですよね。
お口の機能は40代半ばから衰えるといわれています。ただし、多少衰えても生活習慣を変えたり、トレーニングしたりすることで健康な状態に戻していくことができます。「年齢のせいだから仕方ない」と諦めるのではなく、早期に対策を取ることでお口の健康を取り戻せるのです。
東京大学高齢社会総合研究機構(T. Tanaka and K. Iijima et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 2017)の研究によると、オーラルフレイルの症状がある人は、そうでない人に比べて4年後の要介護リスクが2.5倍になるとの結果も出ています。
要介護になる前までの健康寿命を延ばすためにも、お口の機能を維持し、オーラルフレイルを防ぐことはとても大切。
お口の機能をチェックするには、アプリ「おくち元気チェック」を使ってみては?とても簡単にセルフチェックできますよ。
簡単な質問に答えていくだけで「おくち元気度」が確認でき、おすすめのケアの方法も教えてくれます。
●オーラルフレイルリスクチェック(OFI-8)
東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢ら(Tanaka T, Iijima K et al. AGG, 2021.)の研究により開発された「オーラルフレイルに対する簡易スクリーニング質問票」です。オーラルフレイルのリスクの高さがわかります。
●口腔乾燥チェック
該当する状態からお口の乾燥の程度がわかります。
●噛む力チェック
「好き嫌いではなく、噛みづらくなって食べられないもの」を答えることで噛む力の程度がわかります。
●パタカチェック
「パ」「タ」「カ」のそれぞれを1秒当たりどれくらい多く発音できるか測定し、お口周りの筋肉(下記)の状態をチェックします。
「パ」……唇の筋肉の元気度
「タ」……舌の筋肉の元気度
「カ」……下あごの筋肉の元気度
それぞれのチェックの結果から、あなたの「おくち元気度」がわかります。値とともに、レーダーチャートを見ることができます。六角形が大きいほど、お口が元気な状態。逆に小さくなっている部分があったら注意が必要です。このチェックは、初回からのチェック結果の移り変わりを簡単にみることができるので、定期的に実施すれば「おくち元気度」がよくなっているのか悪くなっているのかが視覚的にわかります。
さらに、「お口のケアのポイント」などのおすすめ情報もあるので、参考にして「おくち元気度」をよくしていきましょう。
すでにオーラルフレイルのリスクがある人も、まだ大丈夫な人も、予防や対策が大切です。オーラルフレイルを予防するためには、以下のことを心がけましょう。
これらの情報は、アプリ「おくち元気チェック」でも参照できますよ。
●口腔乾燥を防ぐ
唾液が少なくお口の中が乾燥していると、菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病になりやすい状態になります。また、口臭が出やすくなり、人とのコミュニケーションが楽しみにくくなります。唾液を分泌させるためには、耳の下とあごを刺激する唾液腺マッサージが有効です。
●マウスウォッシュを活用する
お口の中の潤いや洗浄のために、マウスウォッシュも有効です。歯肉炎や歯周病予防ができる有効成分やうるおい成分が入ったものがおすすめです。
●やわらかいものばかり食べない
やわらかいものばかり食べていると、噛む力が弱まり悪循環になります。ムリしない程度に、歯ごたえのあるものを食べるようにしましょう。
●パタカチェック
「パ」「タ」「カ」(あるいは「ラ」)の発音により、お口の周りの筋肉の状態をはかることができます。「毎日パタカラ」などのアプリをダウンロードして、トレーニングをしてみましょう。また、早口言葉やカラオケ、人との会話も有効です。
また、親世代には以下のふたつも気をつけてあげましょう。
●入れ歯の周りを清潔に保つ
入れ歯の周りは不潔になりやすく、そのままにしておくと周囲の歯は虫歯や歯周病になりやすく、さらに歯を失うことにもなってしまいます。
●入れ歯を調整する
時間とともに歯ぐきがやせていくと、入れ歯があわなくなります。その結果、話がしづらくなったり、食べ物を噛みづらくなったり、硬いものが食べられなくなります。歯科医院で入れ歯を調整することでそれらを防げます。
「私にはまだまだ関係ない」と思っていても、お口の衰えは少しずつはじまっています。早期の心がけが健康寿命にも生涯自分らしく人生を楽しむことにもつながります。自分だけでなく、親も一緒にアプリでセルフチェックをして、コミュニケーションを取りながらオーラルフレイルの予防を心掛けていきたいですね。
取材・記事 栃尾江美