歯周病が進行すると、ハグキ組織や歯を支える歯槽骨まで破壊され、ハグキ下がりや歯が抜けることにつながります。そんな歯周病予防に大切なことの1つが、ハグキ組織の分解を抑えること。今回は、そんな“ハグキ組織の分解を抑える”成分「β-GR」について、2023年8月にサンスターから発表された新たな発見をご紹介します。
そもそも歯周病はどうしておきてしまうのか、そして、どのように進行していくのか、そのプロセスを確認してみましょう。
①歯とハグキ(歯肉)の境目にプラーク(歯垢)がたまり、歯周病菌が増殖する。
②歯周病菌を退治するために、体が免疫反応を起こすことでハグキに炎症がおこり、ハグキの腫れや出血が起こる。
③炎症が続くと、免疫細胞によりハグキ分解物質などが過剰に産生され、ハグキ組織が破壊されてしまう。
④さらに進行すると、歯を支える歯槽骨まで破壊され、ハグキが下がり、最後には歯が抜けることにつながる。
つまり、「歯周病菌の感染、増殖→ハグキの炎症→ハグキ組織の分解」と進行し、重度の歯周病につながってしまうのです。
このうち、ハグキ組織が分解されてしまう原因は、歯周病菌を退治するための免疫反応の過程で産み出される「ハグキ分解物質」にあります。
また、歯周病はしっかりケアをしなければ、お口の健康が損なわれるばかりか、全身の健康へも悪影響を及ぼす可能性があります。その点でも、歯周病には十分な注意が必要といえるでしょう。
ここで気になるのが、ハグキ組織を破壊するハグキ分解物質の存在です。その働きを抑えることができれば、歯周病の予防にもつながっていくのではないでしょうか?
この素朴な疑問に答えてくれたのが、サンスターの研究所で働く末川裕研究員と有田卓矢研究員です。2人によれば、最新の研究により、ハグキ組織を破壊するハグキ分解物質の抑制効果を期待できる成分が見つかったとのこと。
末川裕研究員
「ハグキ組織を破壊するのは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)と呼ばれる分解酵素です。そこで私たちはこれをハグキ分解物質と定義し、その働きを効果的に抑制する研究を行いました。その結果、『β-GR(β-グリチルレチン酸)』に、このハグキ分解物質の働きを抑制する効果が期待できることを確認したのです」(有田研究員)
●β-GRがハグキ分解物質の働きを抑制するしくみ
では、β-GRはどのようにハグキ分解物質(MMP)の働きを抑えてくれるのでしょうか?
「ハグキ分解物質には、ハグキ組織を分解する能力を発揮するための“独自構造”があります。これを『活性部位』と呼びます。β-GRは、この活性部位と結合し、無効化してくれるんです。ハグキ分解物質をハサミにたとえるなら、刃にあたる部分が活性部位ということですね。β-GRが刃に割り込むことで、ハグキ組織を切断(分解)できなくなる、といえばイメージしやすいのではないでしょうか?」(末川研究員)
ちなみにβ-GRは、漢方薬で用いられる『甘草(かんぞう)』という植物由来の成分とのこと。今回の研究では、100種類以上の素材をテストし、その中で甘草由来のβ-GRが、ハグキ分解物質の働きを抑えるのに、特に効果が期待できる成分だと確認できたのだそうです。
お2人によると、今回、ハグキ組織の分解を抑制する新たな発見があったとはいえ、歯周病予防には毎日のオーラルケアが大切だといいます。
「歯周病予防のためにはハグキ組織の分解を抑えることが大切なのはもちろんですが、やはり毎日のオーラルケアをしっかりと行なうことが欠かせません。適切なブラッシングはもちろん、歯間ブラシやフロスでハグキのケアを行い、仕上げにマウスウォッシュで口中を洗浄する『BIRステップ』がお口を健康に保つのに効果的であり、ぜひ実践いただくことをおすすめします。」(末川研究員)
『BIR ステップ』の概要
これまで45年にわたり歯周病に関する研究を続け、歯周病が発症、進行するメカニズムを探求し、真摯に向き合ってきたサンスター。その中で、ハグキ組織の分解に着目し、その原因となる物質に直接作用する成分を確認したのは、今回が初めてとのこと。日頃のオーラルケアをより丁寧にしたいと考えている人にとって、今後、β-GRのように「ハグキ組織の分解を抑制する」ことは、要注目のキーワードになるのではないでしょうか?
文:クラブサンスター編集部