がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。
がんの治療中は、お口の中のトラブルが起きやすい状態になっております。中でも、「お口が乾く」「お口の中がネバネバする」といった口腔乾燥はつらい症状のひとつです。患者さんや家族の皆様に、少しでも役立つ情報をお伝えできればと思い、原因と対策についてお話させていただきます。
そもそもなぜ、お口は乾燥するのでしょうか。
実は、その原因は多岐に渡っており、唾液腺の機能低下、加齢、ストレス(緊張や自律神経のバランス)、脱水(下痢、嘔吐、発熱、発汗、高血糖)、薬の副作用(表1)などによって引き起こされます。
抗がん剤の中にも副作用に口腔乾燥が起こるものもあります。例えば、乳がんの治療などで使用されるパクリタキセルやドセタキセルがその一例です。(必ずしも全員に起こるわけではありません)
唾液はお口の中の環境を維持する上で重要な役割を持っています。
① 食べ物をお口のなかでまとめ、飲み込みやすくする
② 味覚を感じる細胞に味の成分を伝達する
③ 口腔内を弱アルカリ性に保ち歯を守る(緩衝作用)
④ 発声をスムーズにする
⑤ お口の中を洗い流し、きれいに保つ
⑥ 水分代謝の調節
⑦ 口腔粘膜を覆い、保護する
⑧ デンプンを消化する
⑨ 体温調節 など
以上のように唾液は生活していく上で大切で、神秘的な役割をもっています。しかし、唾液が少なくなるとこのような唾液のはたらきが低下するため、対処が必要となります。
1)唾液腺マッサージ
頬の部分を手の平でぐるぐるとマッサージし、耳下腺(※)に刺激を与える方法です。長期間お口から食事をしていないことが理由で唾液分泌が低下している場合は有効です。
2)保湿剤での症状緩和
一般に市販されている口腔用保湿剤で症状を緩和させることも有効です。メーカーによって、味、性状はさまざまですので、下の表を参考に、ご自身のお口の機能、ライフスタイルにあわせ選択しましょう。
3)内服治療
お薬の影響は強く受けます。乾燥が強い場合は、一時的なのか長期的に続くのかなど主治医に相談されることをおすすめします。
口腔乾燥のトラブルからお口を守るためには、みなさん自身のセルフケアが主体です。主治医や歯科医師、歯科衛生士と相談しながら、自分にあった方法で対応していきましょう。
※耳下腺…唾液を作る臓器の一つで、三大唾液腺(耳下腺、舌下腺、顎下腺)に含まれる。
<参考文献>
山田好秋著 「よくわかる摂食・嚥下のメカニズム」
プロフェッショナルの視点から開発され、弱ったお口の中にやさしい低刺激タイプや、乾いたお口を保湿するタイプなど、お口のケアに適した商品ラインアップを取り揃えました。