日本に予防医療を普及するために発足したプロジェクト「ラブテリ」代表の細川モモさん。細川さんは、妊娠中から3歳頃までが子どもにとってもっとも大切な時期だと説きます。子どもの未来のため、健康のために改めて考えたい「菌」についてのお話をうかがいました。
プロフィール
――まずはじめに「菌叢(きんそう)」について、教えていただけますでしょうか。
菌叢(きんそう)は、私たちの身体の中にいる菌の集まりのことです。腸内だけでなく、口や肌などにも存在しています。特に腸内環境のベースが形作られるのは3歳までといわれています。後の健康に大きく関わるこの時期に、いかに良い菌を育むか。赤ちゃんの「育菌」の重要性を「べビオティクス®」という概念で発信しています。
――その「べビオティクス®」とは、どのような概念なのでしょうか。
「プロバイオティクス」という、乳酸菌やビフィズス菌など、もともと人の健康にとって良い菌を指す言葉がありますよね。それを、特にベビーの時に意識することが大切だよということを伝えたくて、そのふたつをかけあわせてつけたのが「べビオティクス®」です。
簡単にご説明すると、3歳頃までに決まるといわれている菌叢(きんそう)を育み、強い身体作りをしましょうという“育菌”を啓発する概念です。
――身体には「良い菌」もいて健康に作用するのはなんとなく知っているのですが、「細菌」と聞くと、どうしても悪いイメージが先行してしまうのですが…。
まさに、そういう方がとても多いんですね。
今でこそ、腸内や口の中や肌といった身体の中に住んでいる細菌には良いもの、悪いものがあり、それらが健康に作用していることが研究でわかっていますが、それまでは菌=病原菌を意味するもの。人類は薬やワクチンを作って、それらの病原菌と戦ってきた歴史がありますよね。
その一方で解明されたのが、人にとって有益な菌もいるんだということ。研究が進むにつれて、私たちは身体の中にいる細菌から、思ったよりはるかに恩恵を受けていることがわかったのです。菌は必ずしも悪いものだけじゃない。私たちの健康を維持するのに役立ってくれる菌もいるんです。
――なるほど。まずは「菌」は「すべて悪いもの」というわけではないんですね。
そうなんです。じゃあ、その健康の基盤となる常在菌がいつ私たちの身体に棲みつくのか?というと、お母さんから産まれてくる時に産道を通って初めて菌を受けとって、それから3歳頃までにベースとなる菌叢(きんそう)ができていくんですね。
だからこの3歳頃までの時期をどう過ごすか。これが人生100年時代で健康に対する影響力が大きいと考え、菌の示す有効性を正しく理解して病原菌を正しく怖がり、良い菌は正しく育むこと。このバランスをとることが、これからの健康デザインだと思っています。世のお父さん、お母さんたちには菌を恐れるだけではなく、育てる大切さも知ってほしいですね。
――その赤ちゃんの“育菌”において大切なことはなんですか?
お父さん、お母さんをはじめとする周囲の人たちが健康で、肌や腸内の菌が良い状態であることが重要なんです。チンパンジーを対象にした研究(※)では、血縁関係がなくとも群れの菌叢(きんそう)は驚くほど似通っていることがわかっています。食事や世話を通じて菌を交換しているんですね。
せっかく赤ちゃんの善玉菌を増やしても、周りの大人がせっせと腸内に悪玉菌を増やしてしまうと良くないですよね。赤ちゃんとスキンシップをしやすいお口やお肌も同様です。
そう考えると、家族全員が良い菌を増やしていく、維持することが重要になってきます。
――ありがとうございました。では最後に実際にお試しいただいた「ソダテコ やさいではぐくむスムージー」の感想を教えていただけますでしょうか。
このスムージーは、ビフィズス菌発酵人参ピューレが配合されていて、毎日子どもにあげやすいのが、うれしいですね。
最初、娘にそのまま飲ませようとしたら飲まなかったんですけど、私が毎日飲んでいたら「飲みたい」っていい出して、自然と飲むようになりました。またリゾットに入れて食べさせたりもしています。ほかにも蒸しパンに入れたり、卵焼きに入れたりして飽きないようにレシピを考えています。
子どもには、プレバイオティクスがどうといっても、「ヤダ」っていわれておしまいなので、まず好んでもらうことが、最優先ですね。(笑)
――本日はとても良いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
※ 参考文献
「Social behavior shapes the chimpanzee pan-microbiome」
Science Advances 15 Jan 2016:
Vol. 2, no. 1, e1500997
DOI: 10.1126/sciadv.1500997