むし歯ではないのに、歯が溶けてしまうことがあるのをご存じですか?
第三の歯科疾患といわれている「酸蝕歯(さんしょくし)」になる人が増加しています。その原因のひとつに挙げられているのが飲食物に含まれる酸。そこで、リスクの高いとされる食品と対策をまとめてみました。
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「酸蝕歯」は浸食性歯牙摩耗、エナメル質損耗とも呼ばれるもので、酸によって歯が解ける症状をいいます。「むし歯」はむし歯菌がエサである糖を分解するときに作る酸で歯が溶けますが、「酸蝕歯」は細菌が関与しないという点がむし歯とは異なります。この状態になってしまうと、歯の表面を覆っているエナメル質が溶け、
などのトラブルにつながります。
原因のひとつとして、強い酸性の飲食物を習慣的に食べすぎることが挙げられています。
勘違いしがちなのですが、強い酸性というのは、食品でいうところの「酸性、アルカリ性」や「酸っぱい、甘い」という感覚ではありません。
目安は pH(ピーエッチ)値。この数値が低い飲食物ほど強い酸性で、酸蝕のリスクが大きくなります。pH値は、水溶液に含まれる水素イオンの濃度の値で、7.0が中性。ちなみに健康なお口の中のpHは7.0前後。歯のエナメル質はpH値が5.5以下になると溶けはじめるとされています。
例えばレモンは食品としての分類上はアルカリ性ですが、pH値は低く(つまり強い酸性)、歯への負担が大きい食品のひとつ。
少しわかりにくいかもしれません。そこで、具体的にどのような飲食物のpH値が低いのか?詳しく図にまとめました。
いくつか見ていきましょう。前出のレモンのpH値は約2.0で、強い酸性を示しています。パイナップルやオレンジなどの柑橘、果実も同様です。酸性の水溶液には「なめると酸っぱい」という特徴があり、pH値の低い食品も、その多くが酸っぱいイメージがあります。
そこで「酸っぱいものに気をつければいいのだな」と考えるかもしれませんが、それだけではありません。一覧表には赤ワインやコーラがあります。これらはあまり酸味を感じません。また酸っぱいとまではいかないので見落としがちですがドレッシング、マヨネーズ、ソースといった調味料、さらにじゃがいもやコーンなどの野菜や穀物でもpH値は低め、つまり酸性です。
逆に酸味を感じるチーズは意外にもpH値が高く、また、カラダにとっては酸性の肉、魚などもpH値は高い。逆にレモンやパイナップルはpH値としては強い酸度を示しますが、カラダにとってはアルカリ性で、疲労回復、ビタミンも豊富で大切なもの。上手に付きあいながら、適度にとりいれていきたいものでもあります。
と、少しややこしく、勘違いしやすいものもありますので、この一覧表を保存して、普段から目安にしてみてください。
甘めの味付けの印象もあるお好み焼きやたこ焼きも、ソースとマヨネーズの酸性の食品コンビ。
そう、酸蝕歯対策としては避けたくてもカラダ、さらに心の面でも必要な飲食物は多いもの。我慢ばかりでは辛い。これ以上悪化させないようにするために、「避ける」 だけではなく、同時にこのような対策もしていきましょう。
取材・記事 岩瀬大二