コラム
2023/03/01

むし歯になりやすい歯質はあるの?歯質は生まれつき?むし歯について歯科衛生士が回答!

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クラブサンスターに送ってくださったみなさんの投稿の中から、今月は「むし歯」に関するものをピックアップしました。「生まれつきむし歯になりやすい歯質ってあるの?」「“初期むし歯”を自分で確かめる方法はある?」「治療した銀歯、どうケアしたらいいの?」といったお悩みや質問に歯科衛生士の市川洋子さんに回答いただきました。

監修者プロフィール

 
市川洋子(いちかわ ようこ)
一般財団法人 サンスター財団 歯科衛生士。都内歯科医院に20年間勤務の後、サンスター財団へ入社。現在は予防事業部に所属し、企業歯科健診、成人セミナー、小学校・幼稚園への歯科保健指導などを行っている。

生まれつきむし歯になりやすい歯質ってあるの?

「みがき方が悪いのかもしれませんが、どれだけみがいても、むし歯など歯が悪くなることがあります。生まれつきの歯質というものがあるのでしょうか」(三重県・60代男性)

①むし歯になる4要素~細菌・歯質・食べ物・時間~

大事なポイントですのではじめにむし歯になる条件についてお話したいと思います。むし歯の発生は、①細菌、②歯質、③食事の3つの要素が重なり、④時間が経過することで生じます。歯質が弱かったり、お口の中にむし歯菌がたくさんいたり、食事が甘いものに偏っていたり前述の要素をひとつでも持っているとむし歯のリスクにつながります。歯質もむし歯のなりやすさと関係していますが、それだけが原因でむし歯になるわけというわけではないのです。

■細菌…むし歯菌をはじめとするお口の中の細菌は、食事の共有やスキンシップを通じて家族から子に引き継がれるといわれます。それをゼロにはできませんが、お父さん・お母さんがむし歯になりやすい場合は、ご両親のお口の中の環境を整えることでお子さんへの菌の移動を減らすことができます。また、日頃の食生活や歯みがきに加え、唾液の量によってもお口の中の細菌量は変わります。

■歯質…もともと歯質が弱い方もいらっしゃいます。そうでなくても乳歯や生えたばかりの永久歯はむし歯になるリスクが高い状態といえます。

■食事…むし歯の原因菌の栄養になる糖分をとると、お口の中は酸性に傾きます。ダラダラと長時間甘いものをとると、唾液による中和のサイクルが乱れ、むし歯のできやすいお口の中の環境となってしまいます。甘いものの取り方や摂取量に気をつけなくてはいけません。

②歯質は生まれつき?改善できるの?

さて、「生まれつきの歯質があるのか」というご質問ですが、実は骨格や歯並び、歯質は親からの遺伝の影響を一定程度受けるといわれています。乳歯や永久歯のもとになる芽(歯胚)は赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時から作られます。その時の環境や栄養状態も歯質に関わっていると考えられています。

歯質は生まれつきのままで改善はできないかといえば、そうではありません。歯質を改善する方法には、歯科医院での定期的なフッ素塗布があります。フッ素配合のはみがき粉や洗口液でのデイリーケアでも歯質を強化することができます。しかし、歯みがきでみがき残しがあると、フッ素の効果が発揮されないので注意しましょう。正しい歯みがきとフッ素ケアの両輪で取り組むことが大切です。フッ素だけでなく、唾液も歯を守るはたらきがありますので、お口のうるおいを意識するのもポイントです。

③トータルケアで歯を守ろう

むし歯のなりやすさは歯みがきや歯質だけでなく、お伝えしたように食生活とも関連しています。歯の健康のために質問者さんがご自身でできることとして、ダラダラ食べや、甘いものを取りすぎていないか、まずは食生活を見直してみるのがいいかもしれません。キャラメルなどは歯につきやすく長時間お口に残るため、とりすぎは要注意。また清涼飲料水にも砂糖がおおく含まれるので飲み物にも注意しましょう。

また、「どれだけみがいても…」「みがき方が悪いかも…」とおっしゃっていますが、正しい歯みがきにはコツがあるのも事実です。みがき方のチェックには、以前開催した「オンライン歯みがき講座」の動画や記事も参考になさってください。

そのほか定期的なクリーニングもお口の健康に有効ですので、歯科検診も活用してみてくださいね。少しでも質問者さんのお口の健康の参考になれば嬉しいです。

“初期むし歯”を自分で確かめる方法はある?

「初期むし歯を治療した方がいいのか迷います。そのままにしても治るかもしれないと聞いたことがありますどうしたらいいでしょうか」(愛知県・50代男性)

①そもそも“初期むし歯”ってなに?

「初期むし歯」を知らない方もいるかもしれないのではじめに簡単に説明します。「初期むし歯」とは、歯の表面のエナメル質が溶け出し、組織の構造が弱くなった状態のことを指します。痛みや自覚症状はなく、透明感のある歯が白く濁ったように見えるのが特徴です。この時歯にはまだ穴は開いておらず、今後削って治療をする必要があるかどうかの境目にあるタイミング。ここで適切なケアせず放置したままでいると、むし歯が進行してしまいます。

歯科検診などで耳にしたことがあるかもしれませんが、むし歯の進行度は「CO」~「C4」までの5段階に分けられます。「初期むし歯」は、もっとも初期の「CO:Questionable Caries for Observation(要観察歯)」にあたり、この段階であれば、フッ素の塗布や毎日の適切なお手入れによって歯の再石灰化・修復が見込めます。そのため歯を削る治療はせず、経過観察となる場合がほとんどです。

②自己判断はNG。歯科医院を受診しよう!

ただし、初期むし歯かどうかは、歯科医院で診てもらわないとわかりません。さきほど、初期むし歯は白く濁って見えると説明しましたが、一般の方が正常な歯と見分けるのは困難です。質問者さんもまずは歯科医院に行き、お口の状態を診てもらうようにしましょう。

③“初期むし歯”のセルフケアのポイント

歯の表面からエナメル質が溶け出している初期むし歯の状態であれば、歯を削ることなく組織が弱くなった部分の回復が見込めます。しかし、初期むし歯だからと油断して適切なケアを怠ったり、放置していればむし歯は進行します。初期むし歯と自分で判断するのではなく、必ず歯科医院を受診してください。初期むし歯があるとわかったら、自分でできるケアとして、次のことを意識しましょう。

1、毎日のケアにフッ素を取り入れる
フッ素には、歯の主成分であるカルシウムやリンなどミネラル成分が溶け出すのを抑え、溶け出したミネラル成分を取り込み再石灰化するはたらきがあります。定期的に歯科医院に行き、フッ素を塗布してもらうのはもちろん、デイリーケアにもフッ素配合のハミガキや洗口液を活用し、お口の中にフッ素を付着させることが大事です。

2、適切なブラッシングを行う
プラーク(歯垢)は、むし歯の進行リスクとなります。ハブラシだけでなく、歯間清掃具を活用して、みがき残しのないようにします。

3、歯科検診を定期的に受ける
歯みがきが苦手という方や、初期むし歯が進行していないか確認する意味では、3~4ヶ月に一度の受診をおすすめします。ただし、ホームケアにフッ素を取り入れ、ご自身で適切にケアできるようならば、半年に一度と通常の定期健診ペースで経過観察するのでも構いません。

4、食生活に気を付ける
甘い食べ物や飲み物をダラダラ食べたり飲んだりすると、お口の中は酸性に傾き、むし歯になりやすいです。甘い物の取り方に気を付けましょう。

むし歯は進行すると治療回数や費用がかかり負担が増えてしまいます。お口の状態が気になるようでしたら早期発見のためにも、歯科医院を受診し、適切に対処しましょう。

治療した銀歯、どうケアしたらいいの?

「若い頃に治療して銀歯が4箇所あります。その銀歯の中の歯もむし歯になることがあると聞きました。直接みがけないしどうケアしたらいいのかなと思いました」(宮崎県・40代女性)
 

「治療した歯の中のケアってできるんですか?どのくらいで、歯医者さんにみてもらったほうがいいの?」(福島県・30代女性)

①治療歯に起きやすいトラブルとは?

ご質問いただいた治療した銀歯のケアというのは、歯を守るためにとても重要です。投稿くださりありがとうございます。そもそも治療歯は、健康な歯と比べると新たなトラブルが起きやすい状態にあります。素材の劣化などで被せ物・詰め物が外れてしまったりといったことが起こり得ます

ご質問者さんがおっしゃるように「銀歯の中のむし歯」も治療歯にみられるトラブルのひとつです。銀歯の中のむし歯は、治療に用いた素材とご自身の歯の継ぎ目に段差や溝ができてしまい、むし歯菌が被せや詰め物の内側に入り込むことによって生じます。このように一度治療したむし歯に再びできたむし歯を、歯科では「二次カリエス」と呼びます。治療した歯は歯垢がたまりやすいことなどから、二次カリエスのリスクに注意が必要です。

②フロスや歯間ブラシを使ってみがこう!

治療歯のあるお口のケアは基本的には、冒頭にご説明したむし歯予防のアプローチと同じです。毎日きちんと歯をみがき、ダラダラと甘いものを食べないなど食生活にも気を付けましょう。詰め物・被せ物をして歯垢がたまりやすくなっている箇所は、より意識して丁寧にブラッシングすることが大切です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや、隙間の大きさによっては歯間ブラシを活用し、治療した部位にみがき残しがないように気をつけましょう。

「どのくらいで、歯医者さんにみてもらったほうがいいの?」とのご質問ですが、トラブルの早期発見やメンテナンスの観点から半年~1年に一度の歯科検診を目安とするといいと思います。(一般的に銀歯は経年的に劣化の可能性があるので、5年くらい経っていればみてもらうのがオススメです。)できるだけ長持ちさせるには、ホームケアと歯科検診でのメンテナンスの両方が欠かせません。

③「フロスすると、詰め物がとれる」は誤解

「詰め物が外れるのが心配なのでフロスは使いたくない」と思う方もいるかもしれませんが、その心配は無用です。きちんと治療していればフロス程度の力では外れませんので恐れずフロスを使いましょう。

ただし、治療歯を舌で触った時に段差を感じたり、フロスが以前と比べてほつれやすい、ひっかかりやすくなってきたという時は被せや詰め物との間が緩み隙間が出てきたサイン。治療歯のリスクが高い状態と捉えられますので、歯科医院を受診してください。フロスをきっかけに、詰め物が外れるケースもありますが、これもフロスをしたこと自体が問題なのではなく、処置が必要な状態だったということ。外れてしまった場合は、歯科医院で適切な処置を受けましょう。

ご質問者さんがおっしゃる通り「治療した歯の中」をご自身で直接ケアすることはできません。しかし、治療した銀歯の隙間や境目からむし歯菌が入り込むことでの二次的なむし歯のリスクはケアによって抑えることができます。今日ご紹介した日々のブラッシング+歯間清掃具の使用、食事習慣の見直しをぜひ意識してみてくださいね。

取材・記事 クラブサンスター編集部

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