歯科の定期健診に行くと「デンタルフロスを使いましょう」「歯間ブラシも活用しましょう」とアドバイスを受けることはありませんか。中には「毎日しっかり歯みがきしているし、ハブラシだけで十分では?」「わざわざデンタルフロスや歯間ブラシを使う必要があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。今回は、その疑問を解消すべく、なぜデンタルフロスや歯間ブラシが必要なのか、歯科衛生士さんに理由を伺いました。
監修者プロフィール
- 野田めぐみ(のだ めぐみ)
- 日本歯周病学会認定歯科衛生士。一般財団法人サンスター財団口腔健康室所属。企業健診や感染管理などを行っている。
アンケート結果発表!みんなが歯科医院ですすめられたアイテムは?
まずは「クラブサンスターカフェ」の投票機能を利用し、クラブサンスター会員さんに歯科医院でアイテムをすすめられた経験の有無と、すすめられた場合にはどのようなアイテムだったのかをお聞きしました(※1)。なお、複数すすめられたことがある場合は、一番最近のアイテムをお答えいただきました。
その結果、全体の81%が「歯科医院でアイテムをすすめられた経験がある」と回答。すすめられたことのあるアイテムとして、最も投票の多かったのは「歯間ブラシ/デンタルフロス(34%)」、次いで「ハブラシ(31%)」となりました。

調査の結果から、多くの方が歯科医院でアイテムをおすすめされた経験を持つこと、また、「歯間ブラシ/デンタルフロス」をおすすめされた割合がもっとも高いことが見えてきました。しかし、なぜデンタルフロスや歯間ブラシが重要なのでしょうか。早速、歯科衛生士さんに話しを伺ってみましょう。
※1 <「歯科医院での被推奨アイテム」調査概要>
調査方法:インターネット調査
調査対象:クラブサンスター会員
調査日:2025年1月17日~2月12日
回答数:N=857
歯科医院で歯間ブラシやデンタルフロスをおすすめされる理由
上記のアンケート結果を見て、どんな感想を持ちましたか?
日頃、私が患者さんにお伝えしている感覚と近いです。そもそも日本では、ハブラシの使用状況は97.4%と100%近くに達しています(※2)。そのため、使っているハブラシがあっていないなど特段の理由がない限り「ハブラシを使ってください」とおすすめすることはありません。
一方で、歯間ブラシやデンタルフロスを使用している方は約50%程度にとどまっています(※2)。歯科医院に来られる方は、これらの道具を使っていないか、使っていたけれどやめてしまった方も少なくありません。なので、おのずと「歯間ブラシ」や「デンタルフロス」をおすすめする機会が増えるんです。
ハブラシを使って歯をみがく習慣はあるけれど、歯間ブラシやデンタルフロスは、まだまだ使っていない人も多いのですね。
その通りです。さらに、歯科医院で歯間ブラシやデンタルフロスをすすめるのには、別の理由もあります。研究によると、歯間部の歯垢についてブラッシングによって除去できるのは全体の約6割といわれています(※3)。お口の中に何らかのトラブルがある方は、残りの4割、つまりみがき残しの部分に問題が起こり、歯周病やむし歯になってしまうパターンが少なくありません。そこで予防的な観点や、歯周病やむし歯になってしまった方の治療効果を高め、再発を防ぐために、歯間ブラシやデンタルフロスの使用をおすすめしているんです。
とはいえ「歯間ブラシやデンタルフロスまではちょっと…」という声もあります。
確かに、そう感じる方もいるかもしれません。しかし私は、ハブラシはほぼ100%普及しているのに、歯間ブラシやデンタルフロスが同じように広まらないことの方が不思議に思います。歯科の専門家が推奨しているということは、必要だからこそです。「私には必要ない」と思わず、ぜひ取り入れていただきたいですね。
歯間ブラシやデンタルフロスを選ぶポイント
歯間ブラシやデンタルフロスは、お口の状態のどのような点に注目して、アイテムをおすすめしているのですか。
まず「歯のすき間」に着目しています。歯間ブラシは、歯周病の方や、歯と歯のすき間が広い方へおすすめしています。また、ブリッジなどで歯が物理的につながっている場合にも適しています。
歯と歯が密着している部分には歯間ブラシは入らないため、デンタルフロスの併用をおすすめします。デンタルフロスは歯と歯が接触している部分にも使えるため、幅広い方に適しています。ただし指巻きタイプは慣れていないと使いこなすのが難しい面があるので、小学生や手先があまり器用でない方には、ホルダー付き(柄付き)のデンタルフロスからおすすめすることが多いです。

歯のすき間に道具が入るかどうかが、見極めのポイントのひとつなんですね。
さらに「前歯」と「奥歯」のどちらに使用するかもチェックしています。例えば、歯間ブラシの「I字型」は、前歯部、「L字型」は、奥歯といった形でおすすめするケースが多いです。「カーブ型」は、奥歯にも前歯にもどちらにも使いやすい万能タイプです。歯間ブラシの素材が、シリコンゴムでできていて、針金タイプが苦手な方にはこちらのタイプをおすすめしています。

定期健診に通うことで得られるメリットとは?
オーラルケアの習慣化に向けて、実際に患者さんを見ていて、どのような課題を感じますか?
定期健診を重ねることで正しい習慣が身につく患者さんもいます。しかし、一度の健診で正しいオーラルケアを身につけるのは簡単ではありません。ほとんどの方は、生活環境の変化や仕事の忙しさなどによって、お口の状態に波が生じます。
とてもよくわかります!歯科医院でアドバイスいただいた直後の習慣を続けるのは、なかなか難しいですよね。
そうですね。さらに、歯科の疾患は重症化するまで自覚症状がないことも多いもの。重症化すると後戻りできないことがほとんどです。
定期的に健診でチェックすること、そして定期健診を重ね正しいオーラルケア習慣を身につけることが大事です。
お口の状態は自分だけだとわからないことも多いので、定期的にアドバイスをもらいながら、セルフケアに取り組むのが重要なんですね。歯間ケアと定期健診の重要性についてよくわかりました。ありがとうございました!
※2 令和4年度歯科疾患実態調査
※3 日本歯科保存学雑誌,48, 272-277 (2005)
